メインメニュー

医学生・研修医のページ

会員のページ

北海道民医連の原風景

根は日高の土深く
2008-03-31 07:56

浦河診療所と熱血獣医・原田了介氏

 浦河は、北海道の民主的医療運動にとって特別な場所の1つです。敗戦翌年の1946年4月、浦河町臼杵に北海道で最初の民主的な農村診療所が農民の手で建設され、その志は2年後の1948年8月、日本共産党浦河診療所に引き継がれました。同診療所は翌年1月、北海道勤医協に無償で譲渡され、以後、先駆的な胃カメラ集団検診や地域住民健診などの輝かしい医療活動の歴史を織り交ぜながら、半世紀以上にわたり地域住民の命と健康を守り続けています。
 浦河が北海道の民主的医療運動の源流という栄誉ある位置を占めるうえで、ひとりの獣医師が大きな役割を果たしました。
 

 思想的リーダー
2人で獣医をしていた頃の原田了介氏(右)と二男の克氏=浦河町内の牧場で

 原田了介氏(1906年?1981年)。日本獣医学校在学中に科学的社会主義の洗礼を受け、様似、浦河で家畜診療所を営みながら友人の医師らと新しい社会について語り合い、戦後、浦河の思想的リーダーとして貧窮にあえぐ人々の生活と権利を守るたたかいの先頭に立ちました。その活動は「稼業も財産も投げ捨てて共産党の活動に夢中になった。三男が中学校を休んでイカ釣り船に乗り、持ち帰った30円が思わぬ大金であった」と自身が述懐するほどのものでした。
 1947年、「皆で力を合わせて生活を守ろう」と生活協同組合の設立を呼びかけ、浦河生協の初代理事長に就任、臼杵診療所の設立や、友人加藤久太医師が始めた診療所の日本共産党診療所、勤医協診療所への発展に力を尽くし、1947年の第1回浦河町議選挙に立候補して当選、8期32年間にわたり、住民の生活向上と権利擁護に半生を捧げました。獣医としても、北海道獣医師会日高支部長などを歴任し、「原田式サク癖矯正術」の考案で息子・克氏とともに日本臨床獣医学会賞・日本獣医師会会長賞を受賞しています。

 地域の声に応え


 「病院に先生がいないということは本当に苦しいことでした。あの頃の苦しさを言うと話にも何もなりませんよ。私、原田さん宅に行って1日中泣いたことがあります」(浦河診療所初代事務長の窪田節次郎氏)
 53年、初代加藤所長が病に倒れ、後任の医師確保は困難を極めました。その後も政府の低医療政策、冒険主義的な規模拡大の失敗による借金、医師不足などで北海道勤医協の経営は火の車でした。賃金の遅配・欠配は常態化し、町内の商店への支払いも滞り、当時の事務長が町を歩けないという、診療所存亡の危機に立たされました。
 「その苦しい時代に診療所を支えたのは何であったのか」という問いに、原田氏は言下に、「地域の人たちの声に応えて闘ったからですよ。経営ばかりに目を向けていたら潰れていましたよ」と断言しています。

 天真爛漫、妥協知らぬ人

「了介は徹底して勉強する人でした」と語る、克さん、糸子さん夫妻=7月12日、浦河町の自宅で

 牧場主の鎌田正・管仲氏兄弟らとともに浦河の民主運動の支柱であり続けた原田了介氏。同氏の二男、克さん(72、獣医)は、北海道勤医協浦河社員支部の支部長を務めています。
 「父は口角泡を飛ばす徹底した議論を好み、妥協を知らない人でした。勤医協の運動でも何でも住民運動が基礎になければダメだ、全体で議論し、決めたことは必ず実践しなければダメだと言い続けた人でした」

 地域の力を頼み


 克氏の妻、糸子さん(67)も、「天真爛漫で人におもねることを知らず、大衆に人気がありました」と義父了介氏の人柄を語ります。了介氏の祖父は日高管内静内町の開拓の基礎を築いた徳島藩藩士、稲田家臣団の1員でした。
 克さんは、「これだけ世の中の人たちが困っているのだから、医療情勢がどんなに厳しくなろうと、勤医協が生きる地盤はあります。過去の、職員が給料も満足にあたらない苦しいときに地域の人々とつながって、泥まみれでやってきたことに改めて光を当てることが今こそ大切です。地域で、患者さんを守ることに真剣にとりくまなければ、結果として患者さんを見捨てることにつながりかねない」と語り、「診療所は、もっと地域の力を当てにしてほしい」と注文します。
 地域の人々の生活と権利を守るために、千人を超えた友の会会員をさらに増やし、社員支部の若返りも果たしたいと、克さんは決意しています。
 「友の会の会長もしてきましたが、別に親父の志を継いでという気持ちからではないんですよ。私の人生の、自然の道ゆきです」
 (「浦河診療所創立30周年記念誌・明日の医療をめざして」、「ともに生きて 原田了介の生涯」、インタビューなどで構成しました)
(北海道民医連新聞2006年7月20日第250号)

印刷用ページ 

Copyright (C) 2002-2007 北海道民医連 All Rights Reserved.