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北海道民医連の原風景

B型肝炎 全面勝訴
2008-03-22 14:51

集団予防接種で感染

  「B型肝炎ウイルスに感染したのは乳幼児期に受けた集団予防接種で注射器を連続使用したことが原因」と、札幌市などの男性5人が国家賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は先月16日、接種と感染の因果関係を認め、5人に計2750万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡しました。120万?140万人とされる感染者の大半が予防接種経験者とみられ、国は抜本的な救済策を迫られることになりました。

判決は慢患活動の一到達原告2人は道勤医協の職員

  国の肝炎対策の無策をきびしく断罪したB型肝炎訴訟最高裁判決は、医療費削減に突き進む政府・厚労省を震撼(しんかん)させました。同訴訟の5原告のうち、2人は北海道勤医協の職員です。提訴の準備に関わったのも北海勤医協の職員でした。
 17年間、訴訟に関わり続けた安井重裕さん(55、中央病院事務長)は「判決は70年代民医連運動の慢性疾患管理活動(慢管活動)の一つの到達でもある」と語ります。
 当時、北海道勤医協では高血圧・糖尿病など慢管活動や外科の術後の患者フォローなどが活発に行なわれていました。疾患ごとの管理基準が作成され、患者会も組織されました。目の前の患者さんを治療するだけでなく、患者さんと一緒に社会的な問題提起をする闊達な雰囲気を多職種でつくりあげていました。
                                     安井 重裕さん

肝臓グループ

 76年に民医連に参加した安井さんは、慢管グループの中の肝臓グループに所属し、前年にできた「ウイルス性肝炎友の会」に医療従事者として加わりました。
 特定疾患の対策協議会委員だった大橋晃医師の努力などもあり、74年から北海道は「難治性肝炎」を道独自の特定疾患として医療費の全額助成を行なっていました。しかし、80年代に入ると予算削減の圧力が強まり、患者会や肝グループにとって制度や療養条件を守ることが大きな課題となりました。
 当時、B型肝炎は一般に母子間感染と考えられていましたが、臨床現場には感染経路のわからない患者さんが大勢いました。「なぜ日本にはこんなに肝炎患者が多いのだろう」という疑問も湧いてきました。
 様々な文献を調べると、「集団予防接種で針や注射筒を一人ごと取り替えないで接種したことが原因」と書く医学者が何人もいました。手分けして本格的に19世紀からの諸外国の文献に当たり、肝炎は「医原病」と確信しました。

異端視の中で

 「国の責任を問い、肝炎患者の救済をはかろう」
 安井さんらは早速原告捜しを開始しました。予防接種をうけたことは母子手帳で立証できますが、同制度が出来たのは昭和23年で、それ以前の患者さんは原告になる決意をしても思いはかなえられませんでした。母子間感染でない人、輸血歴のない人…と対象を絞り込み、必要な場合は家族の血液も検査させてもらいました。条件に適合する人に辿り着いても、「国を相手に裁判をおこす」ことに躊躇する人も多く、結局5人が1989年6月30日、札幌地裁に提訴しました。
 訴訟は医学会から異端視されました。全国の有名な肝臓学者を弁護士と一緒に訪ね歩き、何度も屈辱を味わいました。協力を断った医学者が国側証人となり、証言する姿を情けない思いで見つめました。
 高裁で原告側の人として決定的な役割を果たした与芝真・昭和大学教授について、安井さんは「勇気と気骨のある医学者で力を惜しまず援助していただいた」と語ります。与芝証人は、国側の医師の証言に疑問を持ち、300もの外国文献に目を通して「連続注射による予防接種と肝炎ウイルス感染の明確な因果関係」を証言しました。「証拠として提出する文献の翻訳は、私や水尾仁志先生も携わりました」と安井さん。
 日本の予防接種が、過去どのくらいの規模で行なわれていたかを示すため、東京・市谷の厚生省大臣官房統計情報部(当時)に出かけ、マイクロフィルム化されていた明治時代からの内務省資料(「衛生局年報」など)の調査もしました。調査に基づいてグラフを作成すると、HBs抗体の陽性者と予防接種回数の相関関係が明瞭に現れました。

民医連でこそ

 安井さんは、裁判の勝利を喜ぶ一方、「複雑な思いもある」と言います。
 当初、訴訟は民医連の大きな支援で始まりました。しかし、95年9月の肝グループの集団退職問題で事態は一変し、患者会の運動も訴訟の支援活動も大きな困難を抱えました。
 安井さんは「17年の間には辛いこともありましたが、当時の肝グループのバイタリティーと先駆性があったからこそ、ここまでやってこれたことは否定できません」と語り、「B型肝炎訴訟から何を引き継ぐかは多面的に検討されなければなりませんが、当時華々しかった民医連の慢性疾患管理活動の意義については誰もが承認できることでしょう」と言います。
 「私は訴訟を通して、病気がどのように成り立っているのかをよく考え、患者さんと一緒に社会に働きかけることの大切さを学びました。ほとんどの病気が社会的な背景をもっています。アスベストによる中皮腫・肺がんや薬害肝炎などの感染症はもちろん、メタボリック・シンドロームも個人の不摂生に解消するのではない、民医連ならではのアプローチが求められているように思います」
(北海道民医連新聞2006年7月5日第249号)

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