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北海道民医連の原風景

「血糖値が改善しないのはなぜ?」と
2008-03-24 08:45

北の大地で農民に1日つきそった「当別の経験」が

 1993年、札幌で開かれた第1回全日本民医連看護活動研究交流集会(看活研)。そこで地元、北海道民医連は「糖尿病密着ターゲス」を報告しました。糖尿病患者の一日に「密着」して、生活と労働の実態を知り、症状を改善させたというこの報告が、全国の民医連看護職員の大きな反響を呼びました。

全道での実践からうまれた

 猫塚真里子さん(52歳、現在老健施設柏ヶ丘副施設長:写真左)、第1回看活研での「密着ターゲス」の報告者です。 「“糖尿病密着ターゲス”ということぱができたのは、1986年の北海道民医連看護学会でした。ターゲスは一般に血糖値の一日の変動のこと。私たちの“密着ターゲス”では、起床から就寝まで、患者さんの一日に密着して、食前食後の血液をとって血糖他を調べました。食事内容を記載し、本人の生活史・労働歴・糖尿病歴を開きとり、ターゲス終了後、食事カロリーと運動消費カロリーを出して、主治医が結果の評価をするという方法で行ないました」
 「86年の看護学会では、当時札幌看護専門学校の教務主任であった久保知代恵先生(現在東葛看護専門学校副校長)が中心になって、『当別小川通診療所の経験から学ぼう』と呼びかけたところ、体験のレポートが53も集まりました。
 そのなかには、1日の労働を運動消費カロリーとして換算する科学的方法を確立した、もみじ台診療所の画期的な実践もあります。密着ターゲスは、全道の看護師たちのこうした実践の積みかさねで確立していったものです」(猫塚さん)
 当別小川通診療所の「経験とはどのようなものだったのでしょう。

「この食事量では生きていけない」

1984年夏、当別小川通診療所の看護師たちは血糖値のコントロールがうまくいかない糖尿病患者の療養指導に頭を悩ませていました。
 「診療所で考えていてもわからないので、とにかくお宅に伺って、本人や家族と話し合ってみようということで、何件か訪問して療養指導をしました」と当時の婦長、片山后代さん(51歳:写真右下)。「行ってみると、診療所では聞けなかった本音が患者さんから出てきました」


 農業を営む59歳の女性Aさんも血糖値が年々高くなっていました。入院をすすめても「忙しいから」と応じてもらえません。血糖値を抑えるため、食事量を1400キロカロリーに制限されると、Aさんは「これでは生きていけない」とつぷやいて帰っていきました。お宅を訪問してみると、「お腹がすいて昼前には畑にへたりこんでしまう」といい、低血糖状態になることがわかりました。
 「低血糖症状をおこしていることは訪問してはじめて聞いたことでした。いままで知らなかったのがショックで、スタッフで相談し、いったいどんな生活をしてこんな状態になるのか、Aさんに1日つきそって、血糖値の変動をとってみることになりました。」(片山さん)
 Aさんは、5ヘクタールの畑、ヤギ・ウサギに百羽の鶏の世話を一人でしていました。朝四時半起床で働き、昼食までもたず低血糖になるのです。実態がわかり、あらためて一日のカロリ?を算出して、低血糖時の間食のとりかたを指導し、コントロールできるようになりました。
 当別での実践は、84年の看護学会で、「生活に密着したターゲスをとって療養指導がうまくいった」症例として報告されました。

なぜ全国の注目集めた?

 90年代には、小さな血糖測定器が開発され、患者自身が白毛で血糖を、簡易にはかることができるようになって、血糖コントロールも容易になってきたといわれます。当別の実践に学び、80年代に北海道で展開された「密着ターゲス」運動がなぜ、93年の第1回看活研で全国の注目をあびたのでしょうか。
「80年代おわりから90年代は、民医連が施設的にも患者数でも、大きく発展した時期です」と背景を語るのは、全日本民医連の工藤トミエ副会長。「新しい看護師を大量に迎え入れ、民医連看護の理念をどう伝えていくかは、全国的な課題でした。看活研自体、その問題意識で開いたのですが、北海道の密着ターゲスの報告を聞くと、そこには、ほんらいの私たちの視点である、生活と労働の場から患者さんと病気をみていくという原点がみごとに実践されていた。原点を再認識させるとりくみだったんです」

一生忘れられないものに
           「密着ターゲス」に取り組む北海道・余市診療所の看護師(左端)(1994年・「民医連新聞」から)
 「密着ターゲス」のとりくみは、全国にひろまり、2002年には『いのちに寄り添う2002第三分冊・糖尿病患者とともに歩む「密着ターゲス」のとりくみ』(同時代社発行)としてまとめられました。
 その編者のひとり、玉井三枝子さん(51歳、札幌・丘珠病院総看護師長)は、「密
着タ?ゲスのとりくみは、民医連看護を身につける教育の場として全国でとりくまれています」といいます。
 「ただ患者宅を訪間するだけではない、問題意識をもって事実を見る“科学の目”
を密着ターゲスは教えてくれます。事実は患者さんにあり、患者さんの土俵に入って、何を食べ、どう動き、どんな労働のきつさで、血糖値の変化はどうなのかをしっかりみてほしい。もちろん診療報酬の評価もないし、一人外へ出すわけですから、あとの体制もとらなくてはならない。でも、患者さんに必要ならやらないわけにいきません。行く以上は、患者さんの役に立つ、返せるものをつかんできてほしい」と玉井さんは訴えます。
「私もむかし、肝炎がよくならない漁師の患者さんに一日船に乗って、ついていったことがありますよ。こうした経験は一生忘れられないものになります」                                       文・矢作京介/写真・藤沢信枝
(「いつでも元気」2003年7月号より転載)

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