医療・福祉宣言
いつでも、どこでも、だれもが安心できる よい医療と福祉を
いつでも、どこでも、だれもが安心できる よい医療と福祉を
2002年2月23日 全日本民主医療機関連合会 第35回定期総会
戦後の飢餓と伝染病が蔓延するなか、医療に恵まれない人びとと医療従事者が手をたずさえ、民主診療所を各地につくりました。私たち全日本民主医療機関連合会(略称:民医連)は、これらの連合体として1953年に結成されました。それから半世紀、私たちは働くものの医療機関として、何よりも地域の人びとの声を大切にし、切実に求められる医療を実践してきました。そして、人権を守るために社会保障充実の運動をすすめ、災害救援、労働災害、公害や環境などの社会問題にも力を入れてきました。
現在、私たちの施設はすべての都道府県にあり、その数は1500か所をこえ、約5万人の職員が働いています。診療所や病院、介護・福祉施設、薬局などを中心に、予防から治療、在宅ケアまで、保健・医療・福祉にわたる総合的な活動をすすめています。私たちの組織は、医療生活協同組合員や友の会会員など現在約300万人が参加する非営利・協同の事業体であり、経営を公開し、差額病床をもたず、「いのちの平等」をめざして活動しています。
政府はこの十数年来、病気や高齢期の諸問題についてその公的責任を大幅に縮小し、国民の経済的な負担を何度もふやしてきました。医療や福祉が利潤追求の対象にされ、国民にとっては、お金のあるなしで差別されるような状況がすすんでいます。結果として、日本国憲法に示される国民の生存権、健康権の保障が侵害され、社会生活全般にわたる不安が増大しています。
私たちは、すべての国民が人間として尊重される医療と福祉の実現をめざします。このことは、憲法が保障する健康で文化的な生活の基本的な条件であり、私たちの社会的使命と考えます。そのために患者さんや地域のみなさんから真摯に学ぶ姿勢をもちつづけ、科学技術の積極的な成果をとりいれ、同じ願いをもつ広範な人びととの共同の輪を広げます。
20世紀には、多くのいのちが戦争で奪われた反省にたち、平和・民主主義・人権こそ価値あるものとする世界の歩みがありました。この歩みを世界の人びととともにすすめ、21世紀が平和と福祉の世紀となることをめざし、宣言します。
- 人権を守り、ともにつくる医療と福祉
私たちは、信頼、納得の医療と福祉を共同の営みとして実践します。そのために医療と福祉への患者・住民参加を何よりも大切にし、情報の公開と共有を基礎に安全性を高めます。医学医療の進歩、高齢社会の到来や生活不安の増大のなかで、地域からの期待や要求も変化します。私たちは、医療と福祉の公共性を守る運動をすすめながら、生活や人生の質を高められる技術や施設など、新しい課題にも挑戦します。 - 地域に根ざす保険・医療・福祉ネットワーク
ますます厳しくなる生活や労働、そして健康の問題を解決するうえで、地域ネットワークの強さと細やかさが大切です。私たちは、他の医療・福祉施設や行政、ボランティアなど、関係する人びととの交流や共同のとりくみを大事にします。そして、私たちへの期待や意見にしっかり耳を傾け、より開かれたネットワークをめざします。 - 安心して住み続けられるまちづくり
子どもたちが健やかに育ち、高齢者や障害をもつ人が安心して暮らせるまちは、すべての住民にとって住みやすいまちです。これからは、行政の責任と同時に、自治への積極的な住民参加が求められる時代です。私たちは、地域全体が健康になることをめざし、暮らしと雇用・教育・環境・文化などのまちづくりの活動に参加します。 - 憲法と平和、福祉の国づくり
日本国憲法は、不戦を誓い、国民の生存権を保障した世界に誇れるものです。その大切な憲法がこわされようとしているいま、あらゆる人びとと力をあわせて、平和を脅かす動きや憲法そのものの改悪に反対します。そして私たちは、社会保障制度の充実をはじめ、憲法が暮らしのなかに生かされ、人間の尊厳が何よりも大切にされる国づくりの運動に合流します。 - 非営利・協同の組織としての発展
私たちの組織や施設は、地域の財産です。社会的使命をかかげ、事業や運動をすすめる非営利・協同の組織が世界的に発展しており、私たちもその一員として国際交流を深め、経験や教訓を学びます。住民と医療・福祉の専門職が、営利を目的とせず、自主的に設立し、民主的に管理運営する多様な事業の発展方向をさらに探求します。 - 地域とともに歩む専門職の育成
病気や障害をもつ人びとの苦しみや生き方に共感し、地域のなかで学び成長する専門職の育成をすすめます。私たちの事業と運動の前進には、科学性・社会性・倫理性をふまえた鋭い人権感覚をもつ専門職が必要です。多くの学生に体験の場を提供し、あるべき医療と福祉をともに考え、民医連への参加を呼びかけます。