読み物
書籍紹介
2024年10月11日
医師・弁護士・労組・支援者がチームで支える
「心の病」からの社会復帰
藤野ゆき 著
医師・弁護士・労組・支援者がチームで支える
「心の病」からの社会復帰
藤野ゆき 著
厚労省の発表では、2023年度の精神障害での労災申請件数は3千575件で、前年に比べて892件も増え、過去最高を更新し続けています。この中には未遂を含む自殺212件も含まれていますが、実際に労災認定された人は883件で、申請数の4分の一にすぎません。
長時間労働と職場でのパワハラでうつ病を発症し、休職・退職に追い込まれる事案が珍しくありません。勤勉であることが美徳とされてきた日本では、自身を追い込んで心と体を痛める人が少なくありません。「周囲からの評価に応えたい」「バリバリ働くことが本来の自分の姿」などの思いが自身を苦しめていきます。働き方の多様化にともない、疾患の症状も既存の症状理解では説明できないこともあります。
精神の症状が落ち着いて、職場復帰を果たした後も、ある事をきっかけに異常に激高することもあるといいます。職場内でのパワハラが被災者にPTSDのような「トラウマ」を与え、植え付けられた「心の傷」にふれることがあると、過剰反応を示すという事例が紹介されています。こうした反応が自死を選択させる場合もあります。日常的に過労自死の相談を受けている身として新たな知見でした。心の病を患っても、適切な支援と治療によって社会復帰は可能です。
長時間労働や職場でのハラスメントは、心を蝕みます。国がしっかりと罰則規定を持って制限されるべきです。(木)【株式会社せせらぎ出版・1800円+税】