読み物
書籍紹介
2024年11月8日
なぜ東大は男だらけなのか
矢口 祐人 著
なぜ東大は男だらけなのか
矢口 祐人 著
国連の女性差別撤廃委員会は、日本の民法を改正し「選択的夫婦別姓」を可能にするよう、4度目の勧告をおこないました。しかし政府は「国民的合意が必要」として、導入を先延ばしにしています。
東京大学は国内外の大学と比べて男女比に偏りがあり、「男の大学」という指摘もあります。本書の著者である東京大学副学長は、2022年時点で東大の学生の女性比率が20・1%であることに言及し、アメリカのプリンストン大学が共学化にとりくんだ経緯を取材。大学が進むべき姿について問題提起をしています。
本書には、「伝統」や「自治」を名目に女性学生を排除するサークルの存在や、戦後に入学が許可された女性たちの声など、多くの考えさせられる内容が盛り込まれています。
著者は最後に、「ジェンダーだけでなく、国籍、民族、出自、障害の有無など、多様な背景を持つ人々が安心して自由にコミュニケーションできるキャンパスこそが、未来の教育・研究に貢献できる基盤となる」とのべ、「大学に女性が多くいることが当たり前になることが、変革への大切な第一歩」と指摘しています。
なお、本書では「男性」「女性」の表現について、「東大と日本社会の特定のジェンダー力学を浮き彫りにするため、二項対立的に表現している」との説明も付記されています。(野)【集英社新書・990円+税】