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シリーズひと 地域の人と向き合いたい
道南勤医協理事長・函館稜北病院副院長
川口 篤也さん
道南勤医協理事長・函館稜北病院副院長
川口 篤也さん
今回は、昨春から道南勤医協の理事長に就任した道民医連副会長の川口篤也医師を紹介します。
鹿部村の漁師町で生まれ育ちました。野球少年で、夜遅くまで遊んで帰ってから怒られたこともあります。
高校を卒業したら英語を学ぶために東京の私立大学に通いたかったのですが、経済的な余裕がなく、進路に悩みました。医師は病気を治したり、助けることができる良い仕事だと思って北大医学部に通いました。でも、バイトばかりしていたので卒業までに9年かかってしまいましたね。
在学中、勤医協から手紙が届きました。住所を教えた覚えはないのに、なんか怪しいなと(笑)。でも、同級生に誘われて、松浦武志先生の勉強会に参加しました。それがとても面白かったですね。
当時読んでいたメーリングリストに、感染症の専門医として有名な青木眞先生が勤医協中央病院で講演するという案内がありました。興味があったので申し込むと、タクシーチケットをもらいました。当日、講演前に医学生室に通されて、研修に来ないかと誘われました。「タクチケも貰ったし、タダで講演を聞かせてもらったし、一度研修するくらいなら良いか…」と思って研修することにしました。それに自分は先進医療をバリバリやるよりも、地域で弱い立場の人と向き合う医療をするほうが自分に向いていると思いました。
総合診療病棟で、寺田豊先生から学びました。病院の壁に「戦争反対」とポスターが貼ってあって、ちょっと怪しいなと思いましたが、指導体制が充実しているし、良い研修を受けられそうだと思いました。
ちょうど中国でSARSが流行りだした頃、新入医師歓迎会がありました。同期のMさんが中国旅行から帰ってきたばかりで参加したのですが、歓迎会の会場に突然、病理科の先生がPPE姿で現れて、Mさんを会場から連れ出しました。せっかくの場なのにそこまでするかと思いましたが、もし感染が広がったら大変なことになります。ちゃんと感染対策をする病院なのだと感心しました。
最初は感染症に興味があったのですが、6年目に勤医協の総合診療科で家庭医療学に出会い、地域医療に興味を持ちました。
今は函館稜北病院で毎日、外来、病棟、訪問診療、専攻医の指導と振り返り、管理業務などをしています。それから、市内の医師会や在宅医療医会、道南在宅ケア研究会など、諸団体の集まりがあります。
また、各地で医療講演によく呼ばれるようになりました。臨床倫理4分割を学会に発表したら、2014年に医学会新聞で連載することになり、それから講演の依頼が増えました。
道南勤医協の理事長に就任しましたが、その重みを実感しています。自分が借金を背負うことになるかもしれない厳しい状況です。しかし、ピンチの時にしかできないことがあります。いま、「経営検討プロジェクト」を発足して、スピーディーな改革にとりくんでいます。これはピンチでなければできなかったと思います。大変ですが、やるしかありません。
「職員同士の風通しを良くしてイキイキと働き、地域の人たちから選ばれる病院になりましょう」と職員に呼びかけています。そのためにも他者へのリスペクトをもって、自分から変えていくことが大切です。地域の健康づくりのために頑張ります。