読み物

書籍紹介

2025年2月14日

底が抜けた国
自浄能力を失った日本は再生できるのか?
山崎 雅弘 著

底が抜けた国
自浄能力を失った日本は再生できるのか?
山崎 雅弘 著

 著者は過去の戦争について、政治や民族、文化などさまざまな角度から分析する戦史研究家だ。

大手メディアが政財官の利益共同体に取り込まれ、巨大な支配層が形成されている日本の現状を憂う。そして、これまでは常識のレベルで機能していた「社会の自浄作用」が、まったく働いていない異常さを「底が抜けた」と表現する。

 確かにこの間、日本政府は、専守防衛の考え方を放棄して安保3文書を閣議決定した。大企業と新聞は「戦争できる国づくり」に加担し、与党議員は裏金づくりに奔走する。トラブルが頻発するマイナ保険証は熱心に強行するが、能登地震の被災者への対応は冷酷無情だ。

 著者は、底が抜けてしまった国への応急処置として、「手の届く範囲の問題を一つでも二つでも解決に向けて努力して、状況をわずかでも改善し、後世にバトンを渡すしかない」と説く。

 石破首相は、「楽しい日本」というフレーズを強調する。資産家や一部の支配層だけが楽しめる日本を終わらせ、国民が心から楽しめる政治に変えていかなければならない。そのためにも来るべき参議院選挙で、抜け落ちた底を塞ごうではないか。(洋)【朝日新聞出版・957円】

読み物シリーズ・講演