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書籍紹介

2025年4月11日

桐生市事件 生活保護が歪められた街で
小林美穂子、小松田健一 著

桐生市事件 生活保護が歪められた街で
小林美穂子、小松田健一 著

 群馬県桐生市では、生活保護の利用者数が10年間で半減した。いったい何が起きているのか、現場に迫ったルポルタージュだ。

 「ハローワークに毎日通って求職活動をしてください。窓口で書類に印鑑を押してもらってください。それを確認したら千円を渡します」。こう言って保護費を毎日千円だけ渡して、残りの生活保護費は金庫にしまうなど、信じがたい運用が発覚した。市には生保利用者から預かった印鑑1948本が保管され、実際に76人分を職員が押印していたという。

 生活保護を求める市民に対して、「1日800円で暮らしている人もいる。見習って」と高圧的に追い返したり、福祉課に警察官OBを配置し、威圧的な態度で対応した。生活保護を利用できずに命が奪われた事件もある。不必要な扶養照会で、支給を徹底的に削るなど、違法で過酷な「水際作戦」がおこなわれてきた。

 当事者と支援者がこうした実態を明らかにし、行政に改善を求めた。市は一応は謝罪したが、なぜこうした水際作戦が起きたかを明らかにしていない。

 住民の命と健康を守るのは国と行政の責任だ。生活保護バッシングや一部マスコミの偏向報道で、生活保護に対する国民の偏見や誤解も根強い。こうした水際作戦の根絶とともに、誰もが真に人間らしい生活ができる制度に改善することが求められている。(沢)【地平社・1800円+税】


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