読み物
Another 北の息吹
2025年4月11日
写真家 中島宏章誕生秘話~コウモリに魅せられて(全10回)
第1回「野球少年で野鳥少年」
写真家 中島宏章誕生秘話~コウモリに魅せられて(全10回)
第1回「野球少年で野鳥少年」

イラスト:遊鳥 幼少の頃より動物と絵を描くこと、マンガが大好き。
現在、北海道犬と生活をともにしながら、マンガ家をめざして奮闘中。
春が好きだ。お天道さんから降り注ぐ光が祝福モード満載だ。なぜ祝福しているのか分からないが、長くて厳しい冬を乗り越えた生き物たちの喜びに満ちているからだろう。少しのマイナス要素も見当たらない希望の青空。その空を高く翔びながらさえずるヒバリが、これでもかと春を歌っている。
それなのに僕の気分は冴えなかった。ああ、ヒバリはいいな。僕もヒバリのように自由になりたい…と、空を仰いでいると、突然「おい1年!なにやってんだ!」という怒号が聞こえた。
ハッと我に返ると、ボールが目の前を転がっていった。新入りの高校野球部員なんて名前では呼ばれない。「おい1年!」である。僕は大声で「さぁせーん!」と謝って、ボールを先輩に投げ返した。
そのボールが空を舞っていたヒバリに当たりそうになった。ビックリした僕から「ひゃ!」と変な声が出て、身体が勝手にぴょんと跳ねた。本当にビックリしたのはヒバリの方なのだろうが、何事もなかったように地面に降りて、口をパクパクさせて息継ぎもせずにずーっとさえずっていた。
「どうして、そんなに歌っていられるんだ…」ヒバリのエネルギッシュな姿に後押しされるように、僕はもう心に決めていた。
(今回から特別企画として全10回で自叙伝を連載します)