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書籍紹介

2025年4月25日

ごみ収集の知られざる世界
藤井誠一郎 著

ごみ収集の知られざる世界
藤井誠一郎 著

 「ごみ収集」と聞くと、カラスや「北の国から」の純君を思い浮かべます。本書は、清掃行政を研究する著者が地方自治体に足を運び、実際に収集作業をしながらまとめた一冊です。

 ゴミ分別のスペシャリストである清掃職員が、幼稚園や小中学校などで環境学習を支援している自治体もあります。東京都練馬区での環境学習では生徒たちに、「牛乳パックをきれいに洗って資源として出してくれればトイレットペーパーが一つできるよ」と分別の必要性を教えています。また、ペットボトルの原料であるPET樹脂は、原油から作るよりも回収したペットボトルから作るほうが63%もCO2削減が可能とされています。飲み切って異物を中に入れないことが大切です。

 清掃従事者は、不当な差別を受けてきたこともありますが、私たちの生活にとって必要不可欠な公共サービスを担ってくださっている方々へのリスペクトが大切です。

 あなたが捨てたそのゴミはどのように集められて、どう処理され、最後はどこへ行くのか、奥深い世界が紹介されています。

 著者は自らの研究手法について、「地域で起こっている問題を具体的に観察していく手法で研究しようと決意した」とのべ、どんな理論も実践から構築されていることを強調します。現場の実践から学び、深めていくことに共感しました。(の)【ちくま新書・880円+税】

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