読み物

　入社して数年、相変わらず僕は環境調査会社の鳥類調査員として、嬉々として北海道中を駆け回っていた。ある時、会社にこんな依頼が入り込んだ。「コウモリを調べてくれないか」確かにコウモリもれっきとした野生動物である。しかし、コウモリとは盲点だ。野生生物調査のプロ集団であっても、誰もコウモリのことを詳しく知らない。僕も北海道にコウモリが生息していることすら気にかけていなかった。

　調べると、北海道にコウモリが何種類もいて、気持ち悪いイメージとは違ってとても愛らしい動物であること、謎が多くとてもユニークな習性を持つことを知る。僕は一気にコウモリの魅力にハマってゆく。コウモリを調べるには、バットディテクターという名のコウモリ探知機を手に持って、夜な夜なコウモリ探しをする。文献の多くは海外から取り寄せ、英語もできないのに必死で読む。僕はそれこそ、寝る間も惜しんでコウモリに情熱を注いだ。

　そして、そのうちムクムクと「コウモリを綺麗に写真に撮ってみたい」という強い思いが僕の中で膨らんでいった。同時に、誰もやっていないコウモリを題材にして写真家をめざしてみたいと思い始めていた。