読み物

書籍紹介

2025年9月12日

加藤陽子 著
それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子 著
それでも、日本人は「戦争」を選んだ


 著者は、2020年日本学術会議の新会員候補に推薦されましたが、他の5人の候補ともに菅義偉首相に任命を拒否されました。

 本書は、当時の人々が何を考え、どのような道を選択したのかを、中高生向けに5日間の集中講義をおこない、それをまとめた一冊。戦争についてその場にいる中高生たちと一緒に考えている気持ちになります。

 明治以来、日清戦争から太平洋戦争まで、日本の四つの対外戦争を扱っています。膨大な犠牲と反省を重ねながら、日本は戦争をしてきました。なぜ国民は「戦争しかない」と思ったのか。開戦の論理を正当化したものは何か。最新の研究成果も記されており、読みごたえがあります。

 著者は、「時々の戦争の根源的な特徴、時々の戦争が地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を簡潔に明解にまとめた」といいます。戦後80年、「治安維持法」が制定されて100年です。戦争反対を訴えた多くの人が弾圧され、命を奪われた人もいました。戦争を起こさないようにするためにも、歴史から学ぶことが必要です。

 来たる9月20日には、著者を講師に『100年目の地点から考える日本の近代』と題し、記念講演会が開催されます(13時半、自治労会館・札幌市北区北6西7、参加費千円)。お話を聞いて、一緒に考えましょう。(の)【新潮文庫・900円+税】

読み物シリーズ・講演