読み物

書籍紹介

2025年10月10日

平野 啓一郎 著
あなたが政治について語る時

平野 啓一郎 著
あなたが政治について語る時

 先の参議院選挙の結果について、みなさんの受け止め方や思いは様々だろう。物価高対策や消費税、社会保障、少子化などが争点だったはずだ。しかし、残念ながら外国人に対する「排外主義」がクローズアップされてしまった。

 与党が過半数割れしたことはよいが、対立と分断を煽る政党の議席数が増え、改憲議員が3分の2を超えてしまったことは残念だ。どのように分析したらいいのかと考えあぐねていたとき、本書を手に取った。

 著者が新聞などに投稿したコラム・エッセーをまとめた一冊。政治だけではなく、さまざまな分野について著者が思うことを綴っている。たとえば気候変動や教育、AI、ファッション。さらにドラえもんとのび太の関係や、左側に立つエスカレーターなど、その内容は多岐にわたる。しかし、これが政治や様々な制度の課題へと帰結していくのだから面白い。

 SNSなどの狭くて限られた情報だけで選挙に向き合ってはいけない。身近な人と実際に話し合って違った考えを知ったり、理解することが重要だと言われているように感じた。そして自分に突きつけられている「責任」について考え、それから投票に行く。この本はそのきっかけになるはずだ。(本)【岩波新書・1100円】

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