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書籍紹介

2026年2月27日

NBS「看取りを支える訪問診療」取材班 著
家族のレシピ

NBS「看取りを支える訪問診療」取材班 著
家族のレシピ

 FNSドキュメンタリー大賞を受賞した長野放送の番組をもとに、がんで世を去った三嶋伊鈴さんとその家族、そして彼らを支えた訪問診療医を描いた記録。

 50代で末期の胆のうがんと診断された伊鈴さんは、2022年に病状が急悪化し、余命1ヵ月の宣告を受けます。コロナ禍で面会制限があるなか、家族は自宅での看取りを決断しました。この最期の20日間を支えたのが、松本市で「訪問診療クリニック樹」を営む瀬角英樹医師です。勤医協中央病院で消化器内科の研修を行ったこともあり、なじみの方も多いでしょう。

 瀬角医師は、死という厳しい現実を避けず、残された時間を家族が共に生き切るための言葉を尽くしました。「伝えたいことは伝えたか」「大人になるんだよ」という言葉は、家族が「ありがとう」「大好き」という想いを直接伝える勇気となりました。娘の優華さんは『大人になるんだよ』という言葉をふりかえり、「自分でやっていけるというところを見せた方がいいよ」というエールとして受け取ったと話します。

 患者や遺族の交流の場「いのちのカフェ」を主宰するなど、生と死に寄り添い続けてきた瀬角医師。自身も一昨年夏にがんを発症しました。自らも病と向き合い、患者と励まし合いながら診療を続けてきた彼の姿勢は、最期まで自分らしく生きることの尊さを私たちに問いかけています。家族の愛と絆を綴った「レシピノート」を中心に、いのちのバトンを繋ぐことの意味を温かく描き出した一冊です。(秀)【幻冬舎・1510円】


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