現場から

停電で命の危険に晒され

2018年10月11日

在宅酸素療法の患者さん
「来てくれたことが嬉しい」

在宅酸素療法の患者さん
「来てくれたことが嬉しい」

携帯用酸素ボンベが命綱に

 停電によって命の危険に晒される人がいます。肺気腫などで在宅酸素療法(HOT)をしている患者さんは、今回のブラックアウトにより自宅のエンリッチャー(酸素濃縮装置)が止まり、恐怖のときを過ごしました。2年前から在宅酸素療法をはじめて居間にエンリッチャーを置いて生活している当麻町の大波壽美子さん(75歳・夫婦2人暮らし)もそのひとりです。(渋谷真樹・県連事務局)


 9月6日、深夜にカタカタと揺れて目が覚めました。大きな被害はなかったのでふたたび寝ようとした大波さん。しかし、30分後に停電しました。「酸素の機械が止まったので、外出時に使う携帯用のボンベを廊下から持ってきました」。そのとき、酸素ボンベは2本しかありませんでした。「1本で1時間しか持ちません。いつ電気が復旧するのかわからないので、とっても心細かったですよ」。夫は、「酸素がなければ、おそらく5分か10分で命が危なくなるでしょう。どうしようかと心配しました」といいます。


まず患者さんのもとへ
 地震発生から1時間後、一条通病院に駆けつけた道北勤医協本部の廣岡良典さんは、一条クリニックの師長、事務長とともに停電で暗闇の中、在宅酸素療法(HOT)の患者さんの名簿を探して患者さんに連絡しました。電話がつながりにくかったので何度もかけ、6人のうち4人の安否と酸素残量を確認しました。
 大波さんに電話すると、不安げな声で「酸素ボンベが1本しかない」といいます。すぐに病院に置いてある予備の酸素ボンベを病院の公用車に積み込み、一条通病院の鈴木徹医事課長といっしょに向かいました。全ての信号機が消えているため、慎重に運転して1時間、たどり着くと「ああ、よかった」と、大波さん夫婦は安堵の表情をみせます。
 そして直後に、酸素ボンベを供給している会社の職員も到着し、なんとか事なきを得ました。廣岡さんは、「日常的にボンベを届けていて、患者さんの状況を知っているから駆けつけてくれたのだと思います。助かりました」と胸をなで下ろします。


訓練の大切さを痛感
 大波さんは「不安でしたが、勤医協の職員が真っ先に駆けつけてくれた。その気持ちが本当に嬉しい」と感謝します。その後、町職員の支援によって町内の介護施設に宿泊することができました。
 廣岡さんは、「今回の地震と大規模停電で、災害に備えた知識と訓練がいかに大切かを痛感しました。これを教訓に、いま道北勤医協では、災害マニュアルの見直しをおこなっています。患者さんの身になって動くことができるようにしていきたい」と話します。

医療現場