現場から
コロナで多職種連携が進んだ
勤医協札幌西区病院・リハビリ科
業務制限きっかけに病棟業務支援へ
勤医協札幌西区病院・リハビリ科
業務制限きっかけに病棟業務支援へ
新型コロナウイルス感染拡大により、多くの医療・介護現場で業務が感染防止対策として制限されざるを得ない状況が続きました。勤医協西区病院のリハビリ科でも、一時的に対面でのリハビリを停止しました。その間、技士たちは病棟業務に加わりました。そのため患者の生活をより深く見る視点が育まれ、病棟スタッフとの「多職種連携・協働」のとりくみが進展したといいます。(渋谷真樹・県連事務局)
勤医協西区病院のリハビリ科では、入院病棟で患者の機能回復訓練をおこなっていますが、看護業務に関わることは多くありませんでした。理学療法士の具志堅司さんは、「以前から『多職種連携・協働』をすすめることを方針に掲げていましたが、具体的な方法を模索していました」と話します。しかしコロナ禍によって、この連携が大きく進展しました。
病棟でクラスターが発生し、濃厚接触を避けるためにリハビリ科でも多くの業務を中止しました。その期間中、技士たちは病棟で看護師とともに入院患者の食事介助やコール対応などをおこないました。入院患者のほとんどが高齢者であり、食事の配膳・下膳、介助やトイレ誘導などの生活を支えるための対応が24時間求められます。リハビリ技士たちは、看護師の業務量と負担の大きさにあらためて気付いたといいます。
クラスターが収束した後も、リハビリ業務の合間に食事介助や口腔ケア、トイレ誘導、整容など、できることを徐々に増やしました。また、ナースコールにも対応したことで、早く駆けつけることができるようになりました。その結果、頻繁にコールする患者が落ち着き、コールの回数が激減しました。そして、関わり方や声かけの工夫が患者の精神的安定につながることを実感したといいます。
「コール対応を通して、患者さんが日常的に必要な動作がよく分かりました。気持ちに寄り添うことの大切さを改めて感じました」と具志堅さん。
看護師とリハビリ技士が連携することで、全介助が必要だった患者の症状が改善した例もあります。亀田正芳さん(50代・仮名)は、アルコールの影響によるビタミン不足でウェルニッケ脳症と診断され、意識障害や歩行困難の状態で西区病院に入院しました。全介助が必要で、夜間せん妄や認知機能低下、弄便といった症状も見られました。
「トイレで排泄できるようにならないか」と看護師からリハビリ技士に相談があり、情報を共有しながら支援を開始。目標を統一することで、亀田さんのADL(日常生活動作)が向上し、トイレでの排便が可能になりました。弄便やせん妄も解消し、精神的に安定しました。亀田さんは「トイレで用を足すのは気分がいいね」と笑顔を見せるまでに回復しました。現在は老健施設でリハビリを続けています。
「病棟スタッフと同じ目標を持ち、情報を共有することで患者さんの回復につながることを学びました」と具志堅さん。「コロナ禍を機に、私たちの役割や業務の領域が広がり、視野が大きく広がりました。多職種連携では、互いの仕事内容や考え方を理解することが重要です。週1回のカンファレンスに加え、日々の業務の中でコミュニケーションを取り、連携を深めていきたい」と話します。
3病棟看護師長の山田真琴さんは、「コールや転倒が減って私たちも助かっています。それ以上に、患者さんの生活が改善していることに大きな意義があります。同じ場所で働いていても、お互いの業務を詳しく理解できていないことが多いです。それぞれ忙しい中でも調整を重ねてさらに連携を深め、患者さんのために最善を尽くしていきたい」と話します。