現場から

協力して利用者を守った

2025年2月28日

十勝で災害級の大雪

十勝で災害級の大雪

利用者の玄関前を除雪する老健白樺の職員

 帯広市では2月3日の夜から24時間で、全国過去最高記録となる124センチの雪がふりました。4日は行政による除雪が追いつかず、公共交通機関はすべて運行を停止。十勝勤医協の院所・介護事業所でも業務が中止、または制限を余儀なくされましたが、職員が協力して現場、患者・利用者さんを守りました。


 4日朝、職員の多くが帯広病院に出勤できなくなり、前日からの当直と夜勤の職員、徒歩で出勤できた職員で対応しました。准夜・深夜勤務の看護師が日中まで残りました。準夜勤務だった病棟看護師の田中さとみさんは2日間帰宅できず、外来ベッドで仮眠をとりながら業務を続けました。「16時の出勤時に雪はありませんでしたが、1時に帰ろうとしたら太ももまで雪が積もっていました。外来ベッドで仮眠しましたがよく眠れず、食料も着替えもなくて困りました。災害時対策の必要性を実感しました」と話します。

 4日の外来には4人が来院。病棟には40人の患者が入院していました。当直の瀬川高志院長と、出勤できた医師の2人で診療にあたりました。栄養科は職員のために五目おにぎりを作って配りました。瀬川院長も病棟の配膳を手伝い、その場にいる職員が助け合って現場を守りました。


 病棟看護師長の進藤智美さんは、「大雪警報が出ていましたが、一晩でこれほど降るとは思わず、外を見て驚きました」と言います。歩ける状況になく出勤を断念。LINEで職員と体制の確認などをしました。

 その日は東京出張のため不在だった野口総看護師長は、「災害級の大雪なのに直接対応できず、もどかしく感じました。多くの役職者が出勤できなくなり、災害・非常時の対応の難しさを感じました」と話します。


 在宅介護の現場でも送迎や訪問の車両が動かせず、訪問看護やデイサービスを中止しました。薬の補充が必要な高齢者の家に徒歩で向かおうとしましたが、雪で身動きがとれず引き返しました。訪問看護ステーションほっとらいんの渡辺景子所長は、「すぐに利用者さんの所に駆けつけたかったのですが、安全の確保が難しく、電話をかけることが精一杯でした」といいます。幸い、今回の大雪が原因で体調を崩した利用者さんはいませんでした。

 居宅支援事業所「白樺」所長の宮田哲郎さんは、「交通手段がなくなったことで、透析患者さんが通院できない状況です。なるべく早く透析を受けられるように対応していますが、それまでに体調が悪化しないか心配です」と話します。事業所の職員は利用者に電話で、食料や暖房の状況を確認しました。不安を訴える認知症の高齢者もいたといいます。


 デイサービス「ほのか」も業務を休止し、5日に再開しました。しかし、渋滞のため送迎に通常よりも3時間以上かかりました。

 介護主任の山田円さんが認知症のある90代夫婦の利用者宅に向かうと、夫婦で雪かきをしていました。しかし、玄関先が雪に埋もれたままだったため、山田さんが除雪を手伝いました。後日訪問すると、夫婦は「どなたかが雪かきをしてくれて助かりました」と喜びます。山田さんは自分が除雪をしたことは言わず、いっしょに喜びました。


 ケアセンター白樺の訪問リハビリでは利用者宅の駐車スペースを確保するため、職員が先回りして除雪をしました。理学療法士の渋谷悠吉さんは、「訪問してもリハビリできず、雪かきするだけで終わったこともあります。疲れましたが、喜ばれたので良かったです」といいます。

 1週間後、バスなどが稼働を再開し、徐々に回復しています。ほっとらいんの渡辺所長は、「十勝ではこれほどの大雪は少なく、今回の経験から様々な課題があることがわかりました。災害時の体制や対策を考えていきたい」と話します。



現場医療介護地域・友の会