現場から

病院食の現場に物価高騰の波  医療・介護給食に公的支援を

2025年6月13日

民医連道央事業協 給食事業部の苦労と工夫

民医連道央事業協 給食事業部の苦労と工夫

 治療や療養に欠かせない病院や施設の食事。しかし、物価高騰の影響に加え、必要な食材が手に入らない事態がくり返し起きています。民医連道央事業協同組合の給食事業部では、安全な食事を提供しながら経営を守るため、様々な努力と工夫を続けています。


 道内の今年3月の米価は5㎏あたり4107円で、昨年比で約8割上昇しています。1年間に90トンの米を扱う給食事業部では、3千万円以上の負担が増えています。少しでも費用を抑えようと、いくつかの事業所では無洗米の使用をやめて、職員が研ぐことにしました。


 米だけでなく、食材や人件費、輸送費などあらゆるものが高騰しています。価格交渉や安い食材への切り替えの努力をしつつも、1食あたり単価はコロナ前に比べ約80円上がっています。この影響は病院や施設の経営に直結。病院の場合、収入となる「食事療養費」は昨年6月に30円、今年4月に20円しか上がっておらず、食事費の一部を病院が負担する状況です。給食事業部は病院や介護事業所とともに、報酬の引き上げや国、道へ財政支援を求める行動にとりくんでいます。


 給食事業部には2つのセントラルキッチンがあり、千種類近い食材を扱っています。コロナ禍や戦争による物流の停滞、鳥インフルエンザの流行や卵、バターの品薄、災害や気候変動による影響で、ここ数年は価格高騰や必要な食材が手に入らない事態が生じています。安全かつ安定的に仕入れができる業者の選定と価格交渉には、これまで以上に力を注いでいます。

 サンマなど価格高騰で使えなくなった食材もありますが、代替品への切り替えなどで適切な栄養管理に努力を重ねています。栄養価も良く患者さんに喜ばれているうまきたまご(鰻が入った玉子焼き)は、現在は使えていませんが、土用の丑の日に復活できないかと知恵を絞っています。

 栄養バランスや基準を考えながらの献立立案の苦労について、管理栄養士の三沢千恵美さんは、「しっかり食べていただく事をめざし、見た目も大事だからこそ食材の品質を守るために業者と交渉も行っています。季節感も大切にしています」と話します。


 骨粗しょう症とフレイル予防の観点から、エネルギーと栄養素の基準が変更され、国が定める「食事摂取基準」が昨年末に見直され、タンパク質やカルシウムの摂取量が増えました。当然、食材費が増え、調理作業の細やかな対応も増えますが、報酬増はありません。

 「現場の苦労や労働は何も評価されず、負担が増えるだけ。上がった分の報酬も患者さんの負担に転嫁されています。国の補償が何もないことに怒りを覚えます」と三沢さんは力を込めます。給食事業部の職員は5月のメーデー集会で、政治を皮肉った「辛口カレー」のかぶり物で怒りを訴えました。

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