ムーヴメント

「ケアの倫理」に基づいた社会へ

2024年11月8日

第12回 学術運動交流集会ひらく
ジェンダー平等・個人の尊厳 尊重を

第12回 学術運動交流集会ひらく
ジェンダー平等・個人の尊厳 尊重を

 11月2日、「ケアの倫理を中心に、医療・介護・福祉を通じて希望ある未来を作る」をテーマに、第12回学術運動交流集会がオンラインで開催され、全道から280アクセスがありました。6つの分科会で56演題が発表され、さまざまなとりくみが交流されました。(渋谷真樹・県連事務局)


 集会運営委員長の瀬川高志道民医連副会長はあいさつで、「私たちの活動の根底には、平和と命を守ることがあります。綱領と『ケアの倫理』の視点を通じて仲間とともに学び合い、活動の質を高め、未来につなげていきましょう」と呼びかけました。


 記念講演では、全日本民医連理事(愛媛医療生協理事長)の今村高暢さんが「私たちの医療・介護活動と『ケアの倫理』」をテーマに、「ケアとは何か」「ケアの倫理の歴史的変遷とフェミニズムとの関係」「ケアの倫理と民医連」など、7つの概要について説明しました。

 「ケアの倫理」は、アメリカの倫理・心理学者のキャロル・ギリガン氏が1982年に提唱した、人間関係の維持を重視し、他者を傷つけることを避ける考え方です。新自由主義政策がすすむ中、コロナ禍によって女性に偏りがちな家事や育児負担が浮き彫りとなり、「ケアの倫理」が再び注目されるようになりました。

 今村さんは、これまでの介護は主に女性や子どもなど、立場の弱い人々が担ってきたとし、その背景には家父長制の問題があると指摘。ギリガン氏の著書を中心に、上野千鶴子氏や岡野八代氏の著書(『ケアの社会学』『「ケアの倫理」のあとに来るもの』)を紹介し、ケアする権利、ケアさせる権利について説明しました。

 また、「ケアの倫理」と民医連のとりくみについて、「多職種協働や地域連携は、人と人とのつながりづくり。お互いの立場を超えた連携で、地域の医療や介護、福祉を守る活動や、一切の暴力や戦争を許さない日本国憲法を守り実践する活動が『ケアの倫理』に通じる」と強調。そして、「日本は新自由主義政策により教育や医療・介護・福祉が削減され、大きな岐路に立っています。新自由主義に対抗する考え方として、『ケアの倫理』に基づいた人権、個人の尊厳、ジェンダー平等、多様性が尊重される社会づくりが求められています」と訴えました。


 参加者からは、「認知症の夫を支えてきたが、イライラして自分を責めてしまう訪問先の女性のことを思い出しました。講演で『女性がケアを担うのは当たり前』という言葉が印象的で、ケアを担う人たちは声を上げにくいというお話に共感しました。紹介された文献をぜひ学びたい」「非常に深い内容で驚きました。民医連全体で実践されていると思いますが、職員一人ひとりの価値観が試されていると感じます」などの感想が寄せられました。

 講演後の分科会では、医療や介護現場での実践、多職種連携、職員育成、職場づくり、保健予防活動など、さまざまな分野のとりくみが報告され、質疑応答や経験の交流がおこなわれました。

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