ムーヴメント
医学生が広島で平和を考えた
道民医連奨学生・医学生合宿に6人
道民医連奨学生・医学生合宿に6人
3月1~3日、広島県で「道民医連医学生奨学生合宿」が開催され、道民医連の奨学生6人が参加。平和記念公園や原爆資料館、大久野島でのフィールドワークを通して、平和とは何かを考えました。
初日は、広島市の平和記念公園とその周辺にある遺跡を訪ね、2019年に改装された原爆資料館を見学しました。医学生たちは、原爆の熱線で歪んだコップやボロボロになった衣服、全身に火傷を負った被爆者の写真などを一つひとつ時間をかけて見ました。
夜におこなわれた交流会で参加者は、「実際に被爆の遺品を見ると、当時の空気感まで伝わるように感じました」「たくさんの供養塔があり、多くの方が犠牲になったことを感じました」と感想を話しました。
2日目は、広島県の海岸から3キロ南にある大久野島にフェリーで上陸し、毒ガス記念館を訪れました。島を徒歩で一周し、毒ガス貯蔵庫跡や砲台跡、発電所跡などを見学しました。
ここは戦時中、秘密裏に毒ガスが製造された島です。何の説明もないまま多くの人が労働者として駆り出され、毒ガスの犠牲になった方もいました。戦時中は地図から消され、海岸の鉄道から乗客が施設を見ないようにカーテンを閉めて通過したといいます。
ここで作られた毒ガスは、中国や米国本土への風船爆弾などに搭載されました。戦後、米軍主導で廃棄されましたが、広島近海や北海道の屈斜路湖にも大量に廃棄されたといいます。
この島は野生化したウサギがたくさん繁殖しているため「ウサギ島」と呼ばれ、観光名所にもなっています。医学生たちはメモを取りながら、観光地化している島が、昔は「悪魔の島」だったことを学びました。
夜にはグループワークで学んだことを振り返りました。また、東北医科薬科大学1年生の湯野遥菜さんは、「反核医師の会」の活動を紹介。「学生部会で学びたいことを出し合って実現しています。ぜひ皆さんも参加しませんか」と呼びかけました。
勤医協札幌病院の鳥井沙南医師は、2年前に反核・医師の会北海道集会で立ち上げた「いっぽプロジェクト」の活動を紹介。全国の青年医療・介護従事者で構成されており、核兵器禁止条約第3回締約国会議にもメンバーが参加したことや、今後は被爆者医療の継承・発展をさせるために、さまざまな企画を準備していることなどが紹介されました。
最終日は、15歳の時に爆心地近くで被爆した切明千恵子さんが被爆体験を語りました。切明さんは原爆が投下されたとき、建物の陰にいたため奇跡的に生きることができました。その後の地獄のような光景や、親しい人から寄せられた差別的な言葉などを紹介。「私はあと何年生きられるかわからない。戦争だけでなく核兵器の廃絶は、これからの若いみなさんにかかっています」と訴えました。
最後のグループワークでは、被爆体験の感想交流をおこない、一人ひとりが「アクションプラン」を作成。「はだしのゲンを読破することと、長崎にも行って原爆の被害を知りたい」「社会的なことをあまり学んでいなかったけど、この合宿で、世界情勢に目を向けることの必要性を学んだ」「これからも自分の目で見て感じて、多くの人に共有していきたい」と発表しました。
参加した奨学生は、「折り鶴を見るたびに今回の合宿を思い出すと思う。戦争を止めるために協力したと胸を張って被爆者や毒ガス犠牲者の方々に報告したい」。「学校の授業では学ばなかった戦争の加害と被害の歴史を学び、普段考えていなかった平和について深く考えた」と感想を寄せています。