ムーヴメント

勝ってよかった

2025年7月11日

保護基準引き下げを問う「いのちのとりで裁判」
勝訴に拍手と歓声
生活保護の引き下げは違法

保護基準引き下げを問う「いのちのとりで裁判」
勝訴に拍手と歓声
生活保護の引き下げは違法

原告など140人が参加した札幌での集会。午後3時過ぎ、原告勝訴の一報に拍手し喜びました

 生活保護基準の引き下げは違法として全国で1000人以上が原告となった「いのちのとりで裁判」の最高裁判決が6月27日にありました。札幌市内でも集会が開かれ、原告など140人が参加。「原告勝訴」の一報が入ると、「やった」「よかったね」と歓声と拍手がわき起こりました。


 国は2013年から3年間で、生活扶助費を最大10%、平均6・5%引き下げ、総額670億円を削減しました。これに対し、全国で生活に困窮した生活保護利用者1000人超が引き下げの中止を求めて提訴。北海道でも153人が原告となり、「新・人間裁判」としてたたかい、道民医連も参加する「生活保護制度を良くする会」もこれを支援してきました。

 今年3月18日、札幌高裁は生活扶助費の引き下げを違法と断じました。全国的には6月末現在で、原告が地裁で20勝11敗、高裁で7勝5敗となっています。

 そして6月27日、最高裁は、名古屋高裁(原告勝訴)と大阪高裁(原告敗訴)の上告審で、「生活保護費の引き下げは違法」との統一見解を示しました。


 生活保護費の引き下げの背景には、社会保障の改悪と自己責任を押し付ける2012年の社会保障改革推進法付則に「生活扶助の削減」が盛り込まれたこと、そして当時野党だった自民党が2012年7月の衆議院選挙で「生活保護費10%削減」を公約に掲げて政権復帰したことがあります。

 政府は、生活保護利用者の生活実態を無視し、削減ありきで保護費の引き下げを強行しました。しかしこの姿勢は、今回の裁判によって断罪されました。

 しかし、自民・公明党は「全世代型社会保障改革」として社会保障の改悪を閣議決定し、日本維新の会、国民民主党とともに参議院選挙で医療費4兆円削減を訴えています。具体的には、病床数11万床の削減、OTC(市販されている一般用医薬品)類似薬の保険適用除外、高齢者の窓口負担増などが含まれます。

 国には、憲法第25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する義務があります。そして、すべての生活分野、社会保障、公衆衛生の向上と増進に努めなければなりません。

 社会保障は格差を緩和し、貧困の連鎖を防ぐことで社会の安定を保ちます。個人の生活を守るだけでなく、地域や国の経済の基盤として重要な役割を果たします。今こそ社会保障の拡充が求められており、その財源は、大企業や富裕層に応分の負担を求め、国が責任をもって確保すべきです。


 勤医協中央病院に通院している「新・人間裁判」原告の早月俊志さん(67歳)は、「本当に勝ってよかった」と語ります。

 早月さんは52歳で肝臓病を患い働けなくなり、生活保護を利用しています。2013年からの生活保護費引き下げにより、食費や水光熱費を切り詰めるため、朝食を抜いて昼と夜の2食で済ませ、夜は照明も節約してきました。

 「まわりにも足が不自由な方がいます。夏は自転車で買い物に行けても、冬はタクシーを使わざるを得ず、支出が増えます」。早月さんは、引き下げの中止を求めて不服審査請求を行い、原告として裁判に立ちました。生活保護バッシングが吹き荒れる中、名前も顔も公表し、私生活も明らかにして引き下げの実態を訴えてきました。原告は153人でしたが、たたかいは10年以上に及び、36人がすでに亡くなっています。


 高齢者や障害・傷病者が多くを占める生活保護利用者にとって、早期の解決は切実な願いです。北海道の裁判では国が上告していますが、原告団、弁護団、生活保護制度を良くする会は、最高裁が今回の統一見解に基づいて早期に決着を図るよう求めています。

 また、国に対しては、生活扶助費引き下げの誤りを認めて謝罪し、裁判に加われなかった生活保護利用者にも差額を遡って支給すること、再発防止策を講じることなどを厚生労働省に要請しています。

 私たちの身のまわりにも、物価高騰の中、患者さんや利用者、友の会員など、生活に困っていても生活保護を利用していない方が数多くいます。

 生活保護基準は、保育料の減免など47の低所得者向け制度にも連動し、まさに、すべての国民の暮らしを支える制度です。誰もが人間らしく生きることができるよう、生活保護制度をより利用しやすくし、物価高騰に見合った水準へと改善することが求められています。

最高裁が統一見解 原告が勝利



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