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私達にできるまちづくり
西淀川・淀川友の会(大阪) 公園調査から自治体に要望・改善へ
西淀川・淀川友の会(大阪) 公園調査から自治体に要望・改善へ

9月6~7日、友の会活動交流集会がおこなわれ、西淀川・淀川健康友の会の北山良三会長がまちづくりの実践について報告しました。講演の要旨を紹介します。(要約は編集部)
西淀川区は大阪市の北西部にある、下町らしい人情味あふれる地域です。西淀川・淀川健康友の会は10支部あり、会員世帯数は2万3千世帯。協同基金は約14億3千万円に達しています。
公園は地域にとって大切なコミュニケーションの場であり、暮らしや健康に大切な役割を発揮しています。私たちは「公園ウォッチング」にとりくみました。調査のきっかけは、2023年統一地方選挙の前に友の会が実施したアンケートでした。市民から「草が伸び放題で使いにくい」「トイレを整備してほしい」といった要望が目立ちました。そこで、区内すべての公園を対象に実態を調べることにしたのです。
実施期間は2023年10月13日から約1ヵ月半かけました。西淀川区内にある63ヵ所すべての公園を対象に、延べ178人に参加いただき、友の会だけでなく大阪市をよくする会の西淀川地域連絡会とともにすすめました。
調査では、公園の時計、トイレ、休憩場所、遊具、自動販売機、手洗い場・水飲み場、ゴミ箱といった設備の有無を確認しました。また、雑草や樹木の管理状況、バリアフリーの配慮、死角になる場所の有無なども調査し、公園の利用者や近隣住民の方々にもご意見を聞きました。
ある公園の木は、枝葉がすべて切られて丸坊主の状態でした。大阪市では「身を切る改革」と称して予算を削減していますが、実際には「木を切る改革」と言いたくなるほど、公園や街路樹の「強剪定」が進んでいます。通常は年1回程度で行う剪定を「3年もたせろ」と指示され、予算を削られたと公園事務所の方は言いました。
調査の結果、時計は63ヵ所のうち39ヵ所(62%)に設置されていました。休憩場所は53ヵ所(84%)ですが、そのうち2ヵ所は破損。水飲み場は35ヵ所(56%)。バリアフリー対応48ヵ所(76%)。トイレは17ヵ所(27%)でした。清掃が不十分で「汚れていて利用しづらい」という声が多かったです。遊具は壊れて使えないものもありました。
住民や利用者からはトイレに対する要望が多く寄せられました。また、調査に参加した人からは、「地域住民や町会が自主的に清掃していることを知った」「公園愛護会が中心となって掃除を呼びかけている」と感想が寄せられました。実際に、町会が掃除の日を決めて住民に協力を呼びかけるなど、地域で努力が積み重ねられていることが分かりました。こうしたすべての結果を整理して一覧表やグラフにまとめ、各連合町会長に配布しました。
調査結果を受けて懇談・改善を申し入れ
調査結果をふまえて私たちは「要望書」にまとめ、西淀川区の連合町会長会議、十三公園事務所、西淀川区役所と懇談しました。
連合町会長会議では、町会長から「よう調べてくれた、おおきに」と喜んでいただきました。雑草や設備不備に悩んでおり、「市長が変わってから予算が削られ、公園愛護会への補助金もなくなった。町会費で賄うのは限界」との切実な声が寄せられました。
十三公園事務所との懇談で、所長から「丁寧な調査に感謝します」との言葉をいただき、「トイレ整備や清掃予算は市からなかなか出ない」と実情を率直に語っていました。予算の制約がある中でも、できる限り要望に応えていきたいとの前向きな姿勢も示されました。後日、この懇談の内容を詳細に記録した会議録を送っていただきました。
区役所にも申し入れましたが、残念ながら区長は出席せず、課長クラスとの懇談にとどまりました。結果的に具体的な要望への返答はなく、事実上「ゼロ回答」でした。
それでも今回のとりくみは大きな意義があったと感じています。調査結果や懇談内容をまとめたチラシを区民に配布したことで、公園への関心が高まったとの声が多数寄せられました。
公園の役割を再認識 地域の声が力に
その後、柏里西公園では、地元町会の要望を踏まえ、新しい遊具や水飲み場やベンチが設置されました。十三公園事務所の所長からは「変化が出ている」との報告もありました。すべての公園がすぐに改善されたわけではありませんが、整備が進みつつあり、住民の声が実際に反映される成果が生まれています。
今回の調査を通じて、「声を聞いてもらえてうれしい」と語る利用者や、「友の会の人々に励まされた」と話す参加者の感想が寄せられました。公園が町会をはじめとする地域住民の支えによって維持されている姿も見え、改めて感謝の思いが深まりました。最近では「モルック」が人気を集め、友の会でも各公園を積極的に活用する動きが広がっています。
一方で、大阪市政を担う大阪維新の会の姿勢が公園整備の遅れや課題の背景にあることが浮き彫りになりました。維新市政のあり方を見直し、大きく変えていく必要があります。
区内のバス停の安全性を調査へ
いま、公園に続いて「バス停ウォッチング」にもとりくんでいます。バスの安全性や利便性を高めることは、住民の活動範囲を広げ、健康増進やまちの活性化にもつながると考えたからです。今年4月から、西淀川区内109ヵ所のバス停を対象に調査しました。乗降の安全性、屋根・ベンチ・風よけの有無、待機スペースや案内表示、高齢者・障害者への配慮などです。
今後、こうした調査をまとめ、関係各所に改善を求める方針です。
無低利用に繋げる300人の「推進士」
このほか、私たちが「まちづくり」の観点からとりくんでいることを紹介します。まず、無料低額診療事業の普及をするため、独自に「無料低額診療事業推進士」という認定資格を設けました。30分以上の講義を受け、この制度のしくみや利用方法を学びます。役員をはじめ地域の人が地域の方に「こういう制度があるよ」と伝えられるようにするためです。「お金がなくて受診できない」「保険料が払えず健康保険証を取り上げられた」という人たちをいかに無料低額診療につなげるかが大切です。この2ヵ月で約300人が受講して、「推進士」として活動をはじめています。
フードバンクと子ども支援の活動
また、これまでに12回の大規模なフードバンクを実施し、のべ5315人が来場しています。これとは別に、地域ごとに小規模のフードバンクや、常設会場を2ヵ所設けました。いつでも食料を受け取れるようにしています。
活動資金や食料品は、地域の企業や団体に協力を呼びかけて集めました。お寺から100万円の寄付をいただき、活動に大きな弾みがつきました。その後もグリコ本社からお菓子の提供を受けるなど、さまざまな企業やスーパーから協力を受けています。
いまお米の価格が高騰し、多くの方にとって大きな負担になっています。実はその前から、私たちは政府の備蓄米を活用しています。農林水産省に申し込んで、2トンもの備蓄米を提供していただきました。子ども食堂やフードバンクで配布したところ大変喜ばれました。
フードバンクの会場では、相談会も必ず開いています。後日フォローを行い、保険証取得や無料低額診療、生活保護などにつなげています。
地域の前向きな力をつなぐ役割
こうした活動の基本には、地域の実態をきちんと調べ、住民が納得できる形で訴えを行うという姿勢があります。また、行政をはじめ地域の前向きな力を互いに尊重し合い、協働してとりくむことを大切にしています。
大阪市では橋下市長時代から公務員数が大幅に削減され、区役所職員は多忙を極めています。しかし、その中でも必死に努力している姿があります。私たちはそうした奮闘を住民に伝え、「行政も頑張っている」と共有しながら共同を進めてきました。
友の会活動は「楽しく」「やってよかった」と思えることも大切です。私たちはこうして楽しく続けられる工夫を重ねながら、地域づくりの運動をすすめています。まちづくりのとりくみを全国で広げていくとよいかと思います。