ムーヴメント
まずは一歩から始める 安心できる場づくり
北海道勤医協に広がるALLY(アライ)のとりくみ
北海道勤医協に広がるALLY(アライ)のとりくみ
北海道勤医協・札幌病院や中央病院の有志職員たちが、性的マイノリティを含むすべての人が利用しやすい環境づくりにとりくみ、「誰でもトイレ」の設置や学習会の開催、レインボープライドへの参加など、現場の声を大切にしながら実践を広げています。(渋谷真樹・県連事務局)
差別や偏見のない社会をめざして札幌中心部で行われる「さっぽろレインボープライド」に、北海道勤医協は2024年から唯一の医療機関としてブースを出展。それまで個人で参加していた職員が、「みんなでやろうよ」と声をかけあって実現しました。
ブースでは来場者に「医療機関で困ったことはありませんか?」と聞きました。「恥ずかしいから名前で呼ばないで」「手術の同意書はパートナーも認めてほしい」。一つひとつの言葉が重く響きます。札幌病院MSWの長屋春香さんは、「なかなか声をあげられない人の言葉が私たちの行動の原動力になります」と話します。
2023年6月に「LGBT理解増進法」が施行され、全日本民医連は「にじのかけはし」を発行して学習を進めました。執筆した川崎協同病院の吉田絵理子さんは、「完璧でなくても、小さなことからトライしよう」と呼びかけます。
吉田さんの学習講座を聞いた札幌病院看護師の松田麻由子さんは、「性は個人の問題ではなく、人権の問題。すべての人が当事者だ」と知り、目から鱗が落ちる思いでした。
同じ頃、札幌病院産婦人科の西岡利泰医師が呼びかけました。「LINEで自由に意見交換しながら環境整備を進めていきましょう」。松田さんも同僚とともに参加しました。
チームは学習会を重ね、LGBTQ当事者から「受付で名前を呼ばれる恐怖」「男女しかないトイレの困難」などの具体的な声を聞き、「院内でできることから始めよう」と方向性を定めました。
最初のとりくみは、「誰でも気兼ねなく使えるトイレ」の設置です。職員の声を聴きながらニュースで情報を発信し、必要性や運用方法を議論しました。
トイレに貼る案内板ひとつにも悩みました。「性別を限定しない」と示すだけでは、利用者が当事者と見られてしまうおそれがあります。さまざまな記号を組み合わせ、「誰でも普通に使える」表現にしました。「多くの議論の積み重ねによって生まれた工夫です。『すべての人が使いやすい』という姿勢が、結果として、性的マイノリティの方々を含むすべての人にとっての障壁を低くするのだと思います」と松田さん。
2022年、「誰でもトイレ」を院内に設置。2023年4月には札幌病院が市の「フレンドリー企業」に認定されました。
現在、LINEチームには18人が参加。性的指向や参加理由をお互いに聞かず、安心できる場づくりを心がけています。気軽に書き込める雰囲気で、必要に応じて集まって話し合います。年齢や職種に関係なく、関心を持ってくれる人がチームに入ってくれることを喜んでいます。
長屋さんは吉田絵理子さんの講演を聞いて、自分が無自覚に誰かの人権を侵害してしまう可能性に気づきました。入職したとき、制服が一種類しかないことに違和感を持っていた長屋さんは、違和感を言葉にしようと決意。すぐにALLYアライバッジを購入して配るなど、行動へと移しました。
中央病院でSOGIEソジープロジェクトを立ち上げましたが、大きな病院で組織する難しさにも直面し、職場の条件に合わせた組織づくりの必要性を学びました。現在は「有志で肩肘はらずに続けられること」を重視しています。
勤医協のALLYのとりくみは、「学び続けること」「誰もが安心して参加できる場をつくること」「小さな違和感を大事にすること」を土台に広がっています。
松田さんは、「性的マイノリティへのケアは特別なものではなく、誰かをケアすることと同じです。関心のある職員が気負わずに対話しながら、無差別・平等の医療と福祉をいっしょにめざしていきたい」と話します。
「すべての人にとって安心できる医療・介護・福祉」のために、一人ひとりの気づきと行動が全体の空気と環境を変え、今までの「当たり前」を塗り替えはじめています。