読み物

書籍紹介「暗い時代の人々」

2017年7月27日

暗闇を生きた先人に学ぶ

 憲法第21条は、「表現の自由」を保障しているが、昨今のインターネットの書き込みには絶望感さえ抱いてしまう。「太平洋戦争はアメリカとソ連の戦争で、日本はその被害者だ」「かつて北朝鮮が原爆を投下した」など、笑い話にもならない歴史を意図的に歪めた発信に出会うことがある。

 本書は9人の著名人の伝記である。活躍した分野も思想も異なる政治家、作家、芸術家、文化人の生きざまが描かれている。共通していることは、彼らが生きた時代が「暗い時代」であったことだ。1916年から敗戦まで、日本現代史の中でもっとも閉塞的で軍国主義の時代、彼らが何を考え、時代と向き合ってきたのかを知ることができる。

 科学者であった山本宣治は暗い時代に政治家となり、弱い者の味方であるが故に暴漢にいのちを奪われた。竹久夢二は大逆事件やナチスドイツの台頭の目撃者として、時代に抗いながらこの世を去った。

 戦争法や共謀罪の創設など、暗闇の時代へ船を漕ごうとする者たちがいる。確かに存在した「暗い時代」と当時の人々の抵抗と蹉跌を知ることができる良書だ。(德)【亜紀書房・1700円+税】

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