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書籍紹介

2017年9月14日

一億総貧困時代

一億総貧困時代

 小林多喜二の「蟹工船」がブームとなり、年末に「年越し派遣村」が話題となったのは2008年のこと。以降、労働者派遣法の改悪により労働者の雇用環境は悪化した。いま書店には「格差」「破産」「下流」など、貧困をテーマした書籍がたくさん並んでいる。貧困問題はこの数年間で、一部の人々のテーマではなく、高い確率で自分にも降りかかることと認識されるようになった。
 本書は、奨学金、ブラック企業、性産業、そして原発事故や外国人労働者などのキーワードを軸にして、貧困問題がすべての世代に出現していることをレポートしている。
 「世界で一番恐ろしい病気は孤独である」とマザーテレサは言った。貧困が社会的な孤立を招き、「自分だけは」「家族だけは」と身構える生き方を選択してしまう。しかし、地域社会でいっしょに考えるというスタンス、しくみづくりが「1億総貧困時代」への処方箋となるのではないか、そんな期待感を与えてくれる一冊。(德)

【集英社インターナショナル・1512円+税】

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