読み物

連載 北の息吹

2017年12月7日

131 冬すみれ

写真家 中島宏章

 先日、雪にうっすら覆われた森の中で季節外れに咲くスミレに出会いました。スミレといえば普通は春です。春の季語になっているくらいですから。
 松尾芭蕉の有名な句にも「山路来て 何やらゆかし すみれ草」とあります。
芭蕉が春の山道を歩き疲れて一休みしようとしたとき、ふと足元にスミレが咲いていて心を奪われたのでしょう。
 そんなスミレがまた、どうしてこんなに寒い時期に咲いてしまったのか、不思議でもあり、少し滑稽でもあり、寒さに負けない強さや凛々しさも感じられます。寒い時期にも咲いてしまう習性があるようで、冬でも日当たりの良い斜面などで花を見ることができるようです。なので「冬すみれ」が季語として使われています。そこで僕も一句。
 華やかさ
 独り占めして
 冬すみれ
 たしかにこんな寒い中、花を咲かせているのは、このすみれだけでした。

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