読み物

書籍紹介

2018年3月22日

戦争交響楽
中川右介 著

 昨年末、「ウーマンラッシュアワー」というコンビの漫才が話題になった。「アメリカを思いやる前に沖縄に思いやりを」「基地問題を沖縄だけに押しつけるな」「豪華なオリンピク競技場を建てるなら被災地に家を」など、時事問題がネタとなって全国に放送されたからだ。ネット上では彼らの行為を歓迎する声と同じくらい、「こんなこと話して大丈夫なのか」「もうテレビに出られなくなるのでは」などの反応があった。日本はいつからこんなに閉鎖的になったのだろうか。
 芸術家、アーティストの作品や主張は、社会にとって大きな影響力をもつ。だから時に、彼らは政治に利用され、翻弄され、迫害された。
 本書は、ドイツを中心とする地域のワルターやカラヤンなどの音楽家たちが、当時のヒトラー政権下、民主主義が否定される中で、自らは自分の音楽、才能を守るために、国家権力にどのように対峙したのかが綴られている。権力に迎合する者、反抗し死した者、逃亡・亡命を選択した者など、多くの音楽家が深い傷を負った事実だけが残った。戦争のもうひとつの悲劇の記録である。(德)【朝日新書900円+税】

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