読み物

書籍紹介

2018年3月8日

井上寿一 著
戦争調査会

 「反省」は自分の心に問う行為だが、「反省文」は文書を読む人の感情を意識しながら綴られる。太平洋戦争で日本が敗戦国となった直後、幣原喜重郎首相が指揮をとり「日本が戦争に至った原因を調査」することを目的に、「戦争調査会」が結成された。外交、軍事、財政経済など5つの部会で、当時の政治家、外交官、軍人のインタビューや資料収集が精力的におこなわれた。
 本書は「戦争調査会」の活動録であり、収集された記録集である。東京裁判が進行する中で、当時の為政者たちが敗戦までのプロセスやその原因をどのように認識していたのかを知ることができる。軍部による政治介入の社会的背景や日中戦争回避の分岐点など、興味深い分析がなされたが、GHQの命令により「戦争調査会」は解散となる。
 貴重な分析の中に悲惨な戦争で失われた尊い生命、人民の苦難に心を寄せた記載がないことが残念だ。「政治の主人公は、その国に生きる一人ひとりの国民だ」という視点のない「戦争調査会」文書。未完となった戦争の「反省文」は、その不充分さが現在に生きる為政者につながっているのかも知れない。(德) 【講談社現代新書・950円+税】

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