読み物

書籍紹介

2018年4月12日

葬送の仕事師たち
井上 理津子 著

 「ご臨終です」と宣告を受けてから火葬が終わるまで、多くのスタッフが父の旅立ちに寄り添ってくれた。そのことに感謝しているとき、この本に出会った。
 葬儀社の社員、湯灌師、納棺師、復元師、火葬場職員など、華やかなスポットライトが当たることもなく、ひたすら死者と遺族の悲しみと向きあうことを生業とする人たちのルポルタージュだ。2015年に出版され、今年2月に文庫版が発行された。
 彼らは何を思って仕事をしているのか。日本は、団塊の世代が80代となる2027年以降、高齢者を中心とする「大量死亡」時代を迎える。昭和から平成へと時代が過ぎる中で、葬儀のスタイルが大きく変わり続けている。町内会をあげて多くの人に見送られた葬送は、家族葬、一日葬(お通夜を略し告別式のみをおこなう)、直葬(葬儀をおこなわず荼毘に付す)など、脱宗教化、簡素化している。通販サイトでは棺桶が2万円から購入できる。
 地域包括ケア時代、医療と介護、生活の向こうに「死」がある。私たちの仕事の延長線上にある「葬送」。そのあり方を考える一冊である。(德)【新潮文庫・550円+税】

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