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2018年4月26日

老後破産
長寿という悪夢

老後破産
長寿という悪夢

 昭和の時代にあった日本神話。「我がままさえ言わなければ、なんとか生活できる仕事に就くことができる。そして、過ちさえ犯さなければ、定年まで給与が上がり続け、退職金がもらえる」。そんな人生設計をベースに日本の老齢年金制度はつくられた。
 しかし、年金生活者の3分の2が受給する国民年金(老齢基礎年金)は、最高受給額が6万5千円(月額
・2016年度)。「年金は孫へのお小遣い。生活費は貯金や退職金。足りない分は子どもたちが援助してくれる」……そんな夢物語は遠い過去の話だ。
 「苦しい家計の中で子育てして貯金はわずか、退職後の生活費は年金頼み、子どもは非正規雇用で経済的に不安定」「健康保険料と医療費負担、介護保険料と利用料、生きることが死ぬことよりも不幸」。本書はNHK番組取材班による、そんな崖っぷちに立つ高齢者とその家族のノンフィクションだ。
 破綻=破産した高齢者やその家族の事例は特別なものではなく、路ですれ違うお年寄りと家族の実像なのではないか。「長寿という悪夢」は、生命が続く限り覚めることはない。 (德) 【新潮文庫・550円+税】

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