読み物

書籍紹介

2018年10月11日

唱歌からみえる暗黒時代
伊藤公雄 河津聖恵 中西光雄 他 共著

 歴史の教訓のひとつ。権力者が「愛」「絆」「道徳」など、目に見えない価値を押しつけようとしたとき、それは戦争の前夜、暗黒の時代のはじまりだ。日本が戦争する国だった頃、子どもたちが笑顔で歌う「唱歌」は、「国家を愛し、国家のために生命を捧げることを良しとする」人間形成の道具にされた。
 「♪静かな、静かな、里の秋」の4番の歌詞を知っているだろうか。1941年の日米開戦時につくられた「里の秋」は、「大きくなったら兵隊さんだよ、うれしいな。必ずお国を護ります」という歌詞だった。一方、戦争へひた走る日本の将来を憂えた野口雨情は、「あの町、この町、日が暮れる。いま来たこの道、帰りゃんせ」と、子どもの声を通してあやうい日本の行く末に警鐘を鳴らした。
 本書は、学校が子どもたちに教えた「唱歌」をテーマとしている。暗黒時代の中、「唱歌」はどんな役割を担わされ、果たしていたのか。「あやうい時代」だから、あらためて日本の歴史を身近な音楽から考える一冊。(德)【メディアイランド・2000円+税】

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