読み物

書籍紹介

2018年10月25日

日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実
吉田 裕 著

 ここ数年、「日本はこんなに素晴らしい」「日本人は優秀だ」という論調とともに、かつての日本陸海軍の有能さを礼賛する書籍が発行され、太平洋戦争の事実と教訓が意図的に捻じ曲げられている。最近は、日本国憲法そのものの価値を否定する主張も目につく。
 本書は、310万人の犠牲者を出した太平洋戦争に焦点を当て、「兵士の目線・立ち位置」から敗色濃厚となった時期以降、日本陸海軍に何が起きていたのか、戦場の実態を脚色なく伝えるドキュメンタリーである。
 1944年、日本の敗北が決定的となる中、終戦までの期間に軍人、民間人合わせて戦災死が死因の9割以上となったこと、軍人の死亡原因はアメリカやドイツなどの国々と比較して、餓死者、自殺者が異常に多い。衛生管理が悪く感染症の拡大が著しく、水虫や凍傷となった足を引きずりながら逃避行を重ねる兵士たちがいた。天皇への忠誠を求められた善良な兵士の屍の向こうには、最後まで「聖戦」を声高に叫びつつけた無責任な輩たちが見え隠れする。(德)【中公新書・820円+税】

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