読み物

映画「こんな夜更けにバナナかよ」

2019年1月1日

 筋ジストロフィーの鹿野靖明さんを描いた映画「こんな夜更けにバナナかよ~愛しき実話」が、12月28日に封切られました。鹿野さんと出会ってきた医師が紹介します。

「生きる意味」を伝えた鹿野さん

勤医協伏古10条クリニック 医師 鈴木 ひとみ
 主役のモデルとなった筋ジストロフィーの鹿野靖明さんは勤医協札幌西区病院を受診し、入院を繰り返した患者さんです。その主治医が私でした。とくに思い出深いのは1995年人工呼吸器装着となるまでの壮絶なやりとりと、装着後、勤医協では第一例目となる在宅人工呼吸器患者さんとして退院させるまでの、院内外のチームの働きです。
 当時は介護保険制度以前であり、在宅医療は普及していない時代でした。鹿野さんが「普通に生きたい」という気持ちをぶつけてきたエネルギーが私たちを動かし、ボランテイアの若者に生きる意味を伝えたのではないかと思っています。
 患者さんと医師との間の気持ちのやりとりや、医師には見せなかった気持ちは、この映画の原作となった渡辺一史著『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』に記述されています。
 今回映画化にあたり、初回台本から関わらせていただき、撮影協力もさせていただきました。私の知らなかった鹿野さんの家庭での生活やボランティアの思いを、当時の関係者やスタッフ、俳優たちを通して改めて知る機会になりました。医師として大変貴重な体験を鹿野さんを通してさせていただき、ありがたく思っています。
 映画は暗いイメージではなく、明日の糧になる内容です。鹿野さん役には大泉洋さんが、はまり役で演じられていることから想像がつきます。主治医役は原田美枝子さん、勤医協西区病院の看護師役に韓英恵さんが出演します。
 みなさんに映画館で観ていただきたいと思います。全国ロードショーは12月28日から。松竹映画です。

 



「本音の人」のたくましさ
十勝勤医協帯広病院 医師 舘野 知己さん

 「こんな夜更けにバナナかよ」の主人公鹿野靖明さんが亡くなって16年になる。私が19歳の時から約20年の付き合いだった。
 「日本の福祉を変える」と息巻いて、車いすで街に出た。人工呼吸器をつけて各地の大学など精力的に講演してまわっていた。が、「舘野ちゃん、もうだめだ。ボランティアが集まらない。もう死ぬわ」と蚊の鳴くような声で電話してきたこともある。延々と続く「恋バナ」は18番だった。
 そう、彼は「本音の人」。というより、本音で生きるしかなかった。私たちは仕事が終われば家に帰り、好きに時間を過ごす。しかし彼は、24時間365日、いつも誰かがそばにいなければ生きていけない。初対面のときから車いすだったし、自分のおしりだってふけない。ついに自発呼吸もできなくなってしまった。
 それでも彼は何百何千の人の手を借りながら堂々と生きた。結婚だってした。それは実にたくましい偉業だが、本当に恥ずかしく、またみっともないことの連続でもあったと思う。泣いたり、笑ったり、ねたんだり、ご満悦だったり…。ありのままにみせてくれたから、多くの人たちを引き付けたのかもしれない。

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