読み物
連載 北の息吹
2019年2月14日
157 ヒグマの爪あと
157 ヒグマの爪あと
写真家 中島宏章
つい先日、九死に一生を得た体験話を友人から聞きました。友人が山の尾根筋を歩いていたときのこと。「グォッ」という小さな音に気づいて歩みを止めたそうです。すると、また「グーォッ」という音がさっきより大きく聞こえた。そのとき、彼は「これはヤバい!」と、この音の主がヒグマだと直感した。後戻りしつつ、携行していたクマ撃退スプレーの安全ピンをはずしてスタンバイ。そして、2本の木の間に身を隠して間もなく、最悪にもヒグマが彼の前に出てきてしまった。クマも余裕がなかったのであろう、すぐさま彼に向かって容赦なく突進してきた。そこで彼は冷静さを失わず、木の影からクマ撃退スプレーをクマの顔にめがけて噴射!驚いたクマは一目散に去っていったのだとか。
そんな話を聞かされてしまったら、山でこんなヒグマの爪あとを見つけただけで、震え上がってお家に帰りたくなる。そんな小心者の僕です。