読み物

書籍紹介

2019年2月14日

十七字の戦争
川柳誌から見た太平洋戦争と庶民の暮らし
田村 義彦 著

 世界で最も短い定型詩は「俳句」と「川柳」だ。川柳は季語などの約束事もなく口語体が一般的なので、感情をストレートに表現できるという。本書は、治安維持法の下で過酷な検閲や軍部の思想統制の中で、まさに生命がけで出版され続けた「川柳きやり」と「番傘」、ふたつの川柳雑誌に掲載された川柳、十七字の文学集だ。
 天皇の子どもとして「お国のために戦うこと、死ぬこと」を強いられた者たち、残された家族たちや庶民の昭和16年の真珠湾攻撃前夜から終戦までの飾らない言葉が集められている。
 昭和16年、「日の丸の旗が咲いてる支那の街」と浮かれ気分の戦争は、その後4年間も続くとは思わなかった。戦況はきびしくなり、「誕生日だからご馳走海苔茶漬け」「さよなら、逝く子、残る子、疎開の子」と悲壮な句が並ぶ。
 昭和20年夏には「どの駅も死んでくるぞと旗の波」「焼夷弾蹴り踏み叩き水をかけ」敗北感と絶望感が溢れ、終戦時には「戦争は反対だった顔ばかり」。名もなき庶民が見た太平洋戦争、最も短いショートショート、笑えない川柳集だ。(德)【かもがわ出版2200円(税別)】

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