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書籍紹介

2019年4月11日

家賃滞納という貧困
太田垣 章子 著

家賃滞納という貧困
太田垣 章子 著

 毎月の家計支出の中で、もっともウエイトが大きいものは家賃、住宅ローンだ。落語の世界では、大みそかの夜、家賃を滞納している夫婦が押し入れに身を潜め、年が明けるのをじっと待つ。新しい年になれば、それまでの借金、家賃などはチャラになるという。今時はそんな上手い話はない。法的には3ヵ月以上家賃を滞納し督促に応じなければいつ裁判を起こされても文句は言えない。訴訟が提起され、家賃不払いの債務不履行、明け渡しの判決が言い渡される。応じなければ、強制執行の申し立てがおこなわれ、最終的には裁判所の執行官による荷物の撤去、賃借人の強制退去が命じられる。
 本書は、さまざまな理由により家賃滞納、強制退去となった18事例を紹介している。「衣食住」という言葉がある。貧困に至るプロセスは異なるが、経済的な貧しさは食事、衣服、そして住みかまで奪っていく。30年余の「新自由主義路線、例外なき規制緩和」の代償は、社会保障、公的責任の放棄と制度の解体と自己責任の名による社会的なバッシングだ。「負け組」となった者は住む家さえ奪われ、生きる基盤を失う。(德)【ポプラ新書・800円+税】

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