読み物
書籍紹介
2024年11月22日
こむぎのキロク 病気と一緒に生きること
こむぎ 著
こむぎのキロク 病気と一緒に生きること
こむぎ 著
「表皮水疱症」という10万人に1人の割合で発症する皮膚の難病を抱える筆者が、自身の体験を綴ったエッセイ。わずかな摩擦や衝撃で皮膚が剥がれたり水ぶくれができるため、筆者の身体には常にどこかしらに傷があります。幼少期から学生時代、現在に至るまでの日々を描いた本作は、病気を多くの人に知ってもらいたいという思いから生まれました。筆者が運営するユーチューブチャンネルは13万人が登録しています。
表皮水疱症のケアには、毎日のガーゼ交換が欠かせません。傷や感染を防ぎ、体調を管理するための重要な日課で、筆者にとっては洗面や歯磨きと同じくらい当たり前のことです。粘膜にも症状が現れます。クロワッサンを食べた際に食道内の水ぶくれが傷つき、吐血が止まらず入院したことも。「痛みや痒みは日常の一部で、少しの痛みでは何とも思わなくなる」。その言葉には、この病気とともに生きる過酷さと覚悟が凝縮されています。
小学生時代には、病気のことでからかわれたこともありましたが、「言われすぎて気にならなくなった」といいます。この経験から、病気への正しい知識や相手を知ろうとする人間関係の大切さを実感したといいます。社会の無知や偏見が差別につながる現実に、執筆の原動力を見いだした筆者は、本書を通じて病気への理解を深めると同時に、希望や勇気を与えるメッセージを届けています。(八)【イースト・プレス・1400円+税】