読み物

連載 北の息吹

2020年1月1日

178 ねずみ色ってどんな色

アカネズミ

写真家 中島宏章



地球上で最も繁栄


 今年の干支は「子(ネズミ)」です。ネズミは生物学的には「ネズミ目」に属する動物のことで、哺乳類の中で最も種類の多いグループです。つまり、この地球で最も繁栄している動物といえます。繁殖力も生命力もたくましく、人間としては困った存在でしょう。ネズミにまつわる言葉は、良い意味のものは少なく「ネズミ講」「袋のネズミ」「ネズミ捕り(スピード違反の取り締り)」など、実にありがたくない雰囲気が漂います。そもそも「ねずみ」の語源が「盗(ぬす)み」からきているようですから。


鼠色


 鼠(ねずみ)色とは、いわゆる灰色・グレーのことです。庶民は派手な色の着物が禁止されていた江戸時代に、職人が地味な色の中でバリエーションを苦労して作り、流行色となったそうです。火事が多かった江戸時代には「灰」という言葉が嫌われ「ねずみ色」といわれるようになりました。あらゆる色とねずみ色をかけあわせ、何種類もの色が作られました。梅鼠(ほんのり赤みがかった鼠色)、紺鼠(わずかに青みがかった鼠色)、嵯峨鼠(茶色を合わせた上品な鼠色)などなど、実に多くの色が作り出されました。「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃ ひゃくねずみ)」という言葉もあるくらいです。江戸時代には茶色のバリエーションも多く作られました。
 ねずみ色は、どんな色と合わせても調和を生み出す不思議な力を持った色なのです。


他の動物の色


 ネズミ以外にも動物由来の色があります。キツネ色(こんがりキツネ色のフライ)、鳩羽色(山鳩の羽の色)、濡烏(ぬれがらす。女性の艶のある黒髪のような色)、鴨の羽色(マガモの深い青緑色)、鶸色(ひわいろ。マヒワのような黄色)などがあります。鳩の羽の色もよく見ると実にシックで上品な美しい色です。
 カラスの羽の色も、こうしてみると深い黒の中に青みがかった光沢があり、大変に妖艶で気品のある雰囲気の色で、うっとりしそうです。
 面白いのは鶯(うぐいす)色でしょうか。多くの方が思い浮かべる鶯色って、もしかしたら柔らかな黄緑色では?
うぐいす餅の色も同じ黄緑色ですもんね。でも、本物のウグイスはもっと茶色です。なぜか昔からウグイスとメジロは混同されてきました。これを期に覚えましょう、鶯色は黄緑色ではありません。


ネズミは本当にねずみ色なの?


 では、今回の主役のねずみ色はどうなんでしょう?本物のネズミって、ねずみ色なんでしょうか?3種類のネズミの写真を用意しました。ドブネズミ、アカネズミ、ヤチネズミです。この中でドブネズミが昔から人家周辺にいるネズミです。他の2種はいわゆる野ネズミといわれる種類ですね。たしかにドブネズミは汚れたような灰色をしています。


調和の象徴ねずみ色


 突然ですがみなさん、部屋の片隅などに溜まっているホコリは、どうしてねずみ色なのかご存知でしょうか? 実はホコリの正体は、あらゆる色のチリや糸くずの集合体。学校で習いましたね、絵の具を全部まぜると何色になりますか?そう、ねずみ色です。ホコリがねずみ色なのはそれと同じこと。ホコリのねずみ色を紐解いていけば、あらゆるカラーの集まりというわけです。
 この事実を知った僕は震えるほど感動しました。人間と同じだ!と。あらゆるカラーの人たちが調和を保ち、平和的に暮らしていくヒントがこのねずみ色にあるのではないかと直感しました。世の中には白黒つけなければならないこともありますが、実に多様な人たちが社会には存在しているのだから、なんでもかんでも白黒ハッキリとできるものではありません。ねずみ色のようにその人のカラーを損ねることなく、引き立てつつ調和してゆく。そんな社会を夢見て生きていきたいものです。

読み物連載:北の息吹