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Another 北の息吹

2025年5月16日

写真家 中島宏章誕生秘話 コウモリに魅せられて 第3回「ちょっと違うバイト先」

写真家 中島宏章誕生秘話 コウモリに魅せられて 第3回「ちょっと違うバイト先」

 「動物写真家になりたい!」と言う僕に、母親がバイト先を見つけてきてくれた。「中学生は本当はバイトしちゃいけないんだけど特別に時給300円で使ってくれるって!」思えば、僕が野鳥に興味を持ったきっかけも母親が探鳥会(公園などに愛好家が集まってみんなで野鳥を探す会)に連れて行ってくれたのが始まりだった。赤子の頃から僕のことを育ててくれた母親なのだから、手に取るように僕のことを分かって、人生の先導をしてくれていたのかもしれない。そう思うと母親の偉大さに頭が下がる。

 ところが、そのバイト先は僕のイメージするものとはニュアンスがズレていた。そこは、いわゆる街の写真屋さん、写真館であった。動物写真家になりたいのであって、職業カメラマンになりたいわけではなかった。写真館の仕事は、証明写真やホテルの会合などでの集合写真、幼稚園や小学校などの行事写真が主たるものであった。

 いやいや、これって将来僕がやりたい仕事じゃない…。「そんな、写真だもん、一緒だべさ!」強い口調で親から言われたら、じゃあ行くしかないかと、半ば消極的に始まった。とはいえ、僕は初めて行くアルバイトで、期待と不安が入り交じり、ドキドキしていた。

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