読み物
Another北の息吹
2025年5月30日
コウモリに魅せられて 写真家 中島宏章誕生秘話第4回《写真館》社長の言葉
コウモリに魅せられて 写真家 中島宏章誕生秘話第4回《写真館》社長の言葉

アルバイト先の写真館の社長は、とにかくクセの強い人だった。情熱的で常に人より上に立とうとするタイプ。いかに自分が凄い人間なのかを中学生の僕に攻撃的にぶつけてきた。
今にして思うと、それは自信のなさの裏返しであり、何かしら確固たる裏付けがなく、自分自身のことを認めてあげられなかった人だと気づく。
「将来、動物写真家になりたいんです」と僕が言うと、ことのほか激昂した。「日大芸術学部を出たこの俺でさえ好きな写真で食えてないんだ!食っていける奴なんて、千人に、いや一万人に1人しかいない。それがお前にできると思うのか!」とまくしたてた。現代なら確実に、なんちゃらハラスメントの権化と煙たがられる社長だが、僕にとっては人生初の本物の「先生」であった。本気で働く大人、というものを初めて間近に見たし、熱くて真剣な話を聞かせてくれた。
「いいか、写真を撮るってのはな、シャッターを押すことじゃない。そんなのは全体の1%もないんだ。わかるか?」「大事なのは、シャッター押すまでの前段階。準備とセッティング。それが命だ。覚えておけ!」写真の真髄を突く生の言葉には強い説得力があった。