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書籍紹介

2020年7月9日

この国の不寛容の果てに
雨宮処凛 著

この国の不寛容の果てに
雨宮処凛 著

 2016年7月に津久井やまゆり園で、元職員によって障害者19人が殺害される事件がありました。今年3月、被告に対し死刑が確定しました。
 全国革新懇のポスターにも登場する著者は、この事件をめぐって障害の当事者や活動家、研究者らと対談します。話題は事件のことから、優生保護法下の強制手術や杉田水脈議員の「生産性」発言、排外主義、「自己責任論」なども。
 著者は、「ゼロトレランス(非寛容)が幅をきかせるなかで、『自己責任』という言葉はもはや、この国の国是のようになっている」と現状を認識し、「この20年間、この国で生きてきた私たちは何を失ってきたのだろう?」と問いを立てます。
 日本では「ロスジェネ」以降、生き残るための椅子取りゲームを強いられています。この世代の中には、「命は大切」という正論に対する懐疑と「内なる優生思想」があるとの指摘も。
ウイズ・コロナの時代に、失ったものを取り戻し、多様性を認め合える社会を築くうえで、対談の中で語られた「みんなで我慢するのをやめて、ただ対話すればいい」という森川すいめい氏の言葉に希望が感じられました。(吉)【大月書店・1760円】

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