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書籍紹介

2020年8月28日

消費税増税と社会保障改革
伊藤周平 著

消費税増税と社会保障改革
伊藤周平 著

 消費税増税で経済が急速に冷え込むなか、新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけ、深刻な状況が広がっている。歴代政権は消費税増税の理由を「社会保障のため」と説明してきたが、社会保障は充実されるどころか、逆に削減されている。
 筆者は、憲法25条から導かれる「応能負担原則」に従えば、「社会保障の主要な財源は逆進性の強い消費税ではなく、累進性のある所得税や法人税に求めるべきで、所得税や法人税の累進性を強化する税制改革が必要」と強調している。財源問題とあわせて日本の税制と社会保障についてあらためて考えると同時に、「全世代型社会保障制度改革」のねらいも整理・紹介する。
 これまでの医療費削減、公的病院の縮小・再編、保健所の削減などの政策は、コロナ禍によって日本の医療の脆弱さが明らかになった。社会保障だけでなく、雇用保険、住宅保証、教育保障の弱さも可視化されている。危機的状況に対応できず、格差と貧困が極限まで拡大する不安定な社会を許すのか、それとも政治を変えて社会保障を充実させ、誰もが安心して暮らせる社会を実現させるのか、私たちの選択にかかっている。(八) 【ちくま新書・1100円+税】

読み物連載:北の息吹