読み物

連載 北の息吹

2020年9月25日

193 キリギリス

写真家 中島宏章


 キリギリスの登場です。イソップ童話の「アリとキリギリス」では、夏の間、ヴァイオリンで歌ってばかりいたキリギリスは、冬になって食べ物がなくなって困ってしまいます。
 一方でアリはせっせと働き続けて、冬も困らないような蓄えをします。キリギリスのように「今さえ良ければいいのだ」と働かずにいたらあとで困るよ、という教訓といえます。
 では、実際のキリギリスはどうでしょう?実は、キリギリスの成虫の寿命は秋までしかありません。冬の間は卵で春を待つのです。
 キリギリスのオスは、メスにアピールするため寿命が尽きるまで鳴き、自分の子孫を残すことに全てを費やします。本当のキリギリスは後先考えていないどころか、自分の寿命を知っていて、今を懸命に生きる、実に清々しい生き様だったのです。
 キリギリスのように、自分らしく生き抜くことができたら、これ以上の幸せはないのかもしれません。

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