読み物

書籍紹介

2020年11月13日

サル化する世界
内田 樹 著

「今さえ、自分さえよければそれでよい」と思い込む「朝三暮四(ちょうさんぼし)」が多数派を占め、政治経済や学術メディアでも大きな顔をしている歴史的趨勢を著者は「サル化」と呼んでいる。
 「気まずい共存について」という項では政治を例にあげ、「モヤモヤしていることは悪いことではなく、むしろ問題はスッキリしていること」という問題提起から、「正しいか誤りか」「敵か味方か」などのシンプルでわかりやすい解を求めた結果、政治文化が劣化したと指摘。「理解も共感も絶した他者たちとの『気まずい共存』を受け入れ、ちょっとずつでも意思疎通・合意形成できるよう耐えていくしかない」と述べている。
 また、本来の英語教育は「目標文化へアクセスすること」が目的のはずだが、今は「英語ができないとビジネスができない」と教育に利益誘導が持ち込まれ、子どもたちは最少の学習努力で英語を獲得しようとすると指摘。学習意欲の減退や英語力の低下につながっているだけでなく、そもそも文科省が「こどもたちが学習したいと思っていないという前提に立っている」と問題点を指摘する。そんな考え方や見方があるのかと、新しい発見がたくさんある一冊。(安)【文藝春秋・1500円+税】

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