読み物

連載 北の息吹

2021年1月1日

ウシ

写真家 中島宏章


アルファベット
 2021年の干支は「丑」です。突然ですがみなさん、アルファベットの一番最初の文字は「A」ですよね。実は、「A」という文字の歴史を大もとまでたどると、ウシの頭の象形文字なのです。アルファベットの原型はギリシャ文字ですが、そのギリシャ文字のα(アルファ)の起源になるのが、フェニキア文字の「アレフ」です。アレフの意味は牛。角の生えた雄牛からつくられた象形文字だったのです。

 はるか昔からアルファベットの起源にまでさかのぼるとは、ウシという家畜が、いかに大昔から私たちに深く関わってきたかという証拠といえましょう。そういえば、アレフといえば北海道民が大好きな「びっくりドンキー」の会社が「アレフ」ですよね!ハンバーグだけじゃなく、焼き肉、チーズ、ソフトクリーム。ウシさんのおかげで私たちはおしいものを頂くことができますね。


ウシとヒトは似ているか?


 ヒトにとってウシはかけがえのない存在です。そんなウシとヒトの遺伝子を比べると、驚くなかれ、なんと80%が共通しているそうですよ。80%なんて、ほとんど同じじゃないかと思いますよね。ヒトとウシでは、体の大きさから何から何まで違うのに、どうして80%も同じといえましょうか。にわかに信じられません。


地球の生物みな兄弟


 そもそも、自分と他人の遺伝子を比べてみると、なんと99・9%共通したものを持っているそうです。それって、ほぼ同一人物なのでは?人種の違いも遺伝子でみると、ごくごくわずかな差しかないといいます。
 同じようにみていくと、チンパンジーでは96%がヒトと似通っているのだそうで…。ネコちゃんは90%がヒトと共通で、ネズミでさえも85%が似ているのだということ。さらには、金魚が70%と信じがたい数字が出てきました。もっと進めてみると、もっと驚いたことにハエが出てきます。ハエがなんと61%もの遺伝子がヒトと共通だというのです。ハエとヒトが6割も一緒?こんな話を聞かされて、なにやら意味不明な絶望感すら出てきました。
 そして、とどめがバナナです。なんと50%です。バナナとヒトが50%も同じだと言われてごらんなさい。朝の食卓に出てきたバナナに「そうか、お前も俺も、大した変わらんのだな」と、思わず話しかけてしまうかもしれませんよ(笑)
 人種どころか生物同士の壁も超えて、「生物みな兄弟」と言わざるを得ません。


人生のヒントはウシにあり


 2020年はコロナに次ぐコロナで大変な年になってしまいました。先行きの全く見通せない、そんな時代をどう生きるべきか?大変なときこそ、芸術なるものが最も救いをもたらしてくれます。僕は、今だからこそ、高村光太郎のこの有名な詞が心に染みます。

「牛」(高村光太郎)より


牛はのろのろと歩く
牛は野でも山でも道でも川でも
自分の行きたいところへはまっすぐに行く
牛は急ぐ事をしない
ひと足、ひと足、牛は自分の道を味わって行く
牛は非道をしない
牛はただ したい事をする
自然にしたくなる事をする
牛はしたくなってした事に後悔をしない
遅れても、先になっても 自分の道を自分で行く
ひとをうらやましいとも思わない
利口でやさしい眼と なつこい舌と
かたい爪と 厳粛な二本の角と
愛情に満ちたなき声と すばらしい筋肉と
正直なヨダレを持つた大きな牛
牛はのろのろと歩く
牛は大地をふみしめて歩く
牛は平凡な大地を歩く


 本当の詞はもっともっと長いのですが、勝手ながら抜粋をさせていただきました。この詞は、より殺伐さを増してきたコロナ禍にあって、大切な何かを思い出させてくれます。さあ、丑年。私たちは、どんな成長をできるでしょうか。牛のように、ゆっくりと、でもしっかりと自分の道を歩もうではありませんか!

読み物連載:北の息吹