現場から

安心 安全のトイレに

2017年7月27日

職員の意見を取り入れ設置
道南・函館稜北病院

職員の意見を取り入れ設置
道南・函館稜北病院

使い勝手を確かめる藤山さん(実際に立つときは下の棒を格納します)

 道南勤医協・函館稜北病院は昨年、増改築リニューアルしました。患者さん、利用者さんが使いやすく、職員にとって負担の少ない病院にしようと、さまざまなアイディアを採用して設備をつくりました。自力で立つことが困難な入院患者さんがトイレを利用しやすいようにと、リハビリ技師たちが中心になって考案した可動式手すり「藤山バー」もそのひとつです。


患者さんを最優先に

 「古い病棟は使い勝手が悪かった」と、看護師長の鈴木智子さん。改装前の一般病棟には車イスで入れるトイレが少なく、2人で介助が必要な患者さんは利用が難しかったため、改善が求められていました。

 今回の増改築では、患者さんが使う所を最優先に改善することにしました。とくに病棟のトイレや洗面所まわりは入院患者さんにとって大切な空間です。そこで、トイレを考える「プロジェクトチーム」をつくって検討しました。

 作業療法士と理学療法士、看護師長など7人が職員の意見を聞き、壁と便座の位置が異なる3パターンのトイレを設置することにしました。これによってさまざまな身体の障害に対応できるようになりました。さらに、改築でとり壊す予定の一室に、使い勝手を試す「モデルトイレ」を設置。職員が患者さんの気持ちになって車イスと便座の移乗を繰り返し、介助のしやすさ、手すりや点滴を吊り下げるフックの位置など、細かい所まで検証しました。


立位を支える補助棒

 「立っている時も身体を安全に支えられるようにしたい」。便座に座っているときに寄りかかる補助棒はこれまでもありましたが、立ったときの補助棒もあれば患者さんが安心でき、今まで2人でやっていた介助を1人でできる。そう考えた作業療法士の藤山翔さんは、座位用の補助棒の上にもう一本設置することを提案しました。

 「壁の手すりから手前に倒す、収納できる支え棒を作りたい」。要望を受けた建設業者が調べると既製品にはなく、オーダーメイドになることがわかりました。費用はかかりますが、職員が使うイスなどの購入を後回しにして設置することにしました。


「喜ばれたで賞」

 車イスからトイレに移り、立ち上がる。すべての動作中、両手でしっかりと寄りかかることができるこの支えは発案者の名をとり「藤山バー」と呼んでいます。患者さんから「安心できる」と喜ばれ、立つことができる時間が長くなることでリハビリの効果も期待されています。

 藤山さんは、「介助が楽になったと職員からも好評です。実際に使ってみると改善の余地はまだありますね。もっといろいろな工夫をして、少しでも患者さんのためになることをしたい」と意欲をみせます。

 この「藤山バー」を、北海道民医連の看護介護研究交流集会(7月9日)の「看介展」コーナーで紹介すると、「私たちの院所でも使ってみたい」と評判になり、「喜ばれたで賞」を受賞しました。藤山さんは「私たちの意見を積極的に取り入れて改築してくれたことに感謝しています。家庭にも設置できるようになるといいですね」と話します。

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