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2017年8月25日

子どもの貧困と無料低額診療
札幌・菊水こども診療所の事例から

カルテを見ながら話し合う、菊水こども診療所の(左から)下川部さん、神尾さん、多屋さん

 自民・公明党政権の社会保障制度の改悪により、健康保険料や窓口負担が急増し、深刻な健康格差をもたらしています。その中で、無料低額診療制度(無低制度)は、低所得者がお金の心配をせずに治療を受けることができると注目されています。今回から、北海道民医連の無低制度のとりくみや事例をシリーズで紹介します。第1回は、北海道勤医協の「菊水こども診療所」です。

 

 

 勤医協札幌病院に併設されている「菊水こども診療所(こども診)」は、市内唯一の無低制度を実施している小児科専門の診療所です。北海道勤医協の無低制度は就学援助世帯の全員を対象としているため、決定通知書を提示するだけで適用になります。
 こども診での無低制度利用者は、昨年まで月平均20人程度。そのうち新規の利用者は数人でした。しかし、今年5月から7月までに6~10人に増え、3ヵ月間に25人が新規利用しています。昨年同時期の5人と比べて急増しています。


就学援助世帯に
市が制度を紹介
 札幌病院医療福祉課のソーシャルワーカーの桜井亨弘さんは話します。
 「北海道教育長は昨年、就学援助世帯に無低制度を知らせるよう各市町村に通知しました。これを受けて北海道勤医協では、札幌市にも同様の措置をとるよう要望しました。市は、今年度の就学援助の決定通知書に『お知らせ』として無低制度の紹介と、北海道勤医協が相談窓口になっていることを掲載しました。このため決定通知書が届く5月から問い合わせが増えています。白石区だけでなく、北区や南区などの遠方からも受診に来ます」。


重い窓口負担は深刻
 札幌市では、小学校入学前の子どもは外来・入院ともに初診時の窓口負担580円ですが、小学校に入ると医療費の助成は入院だけになり、外来は3割負担で、医療費の負担が重くのしかかります。
 また、「子ども医療費助成」の対象者でも無低制度を利用する人も増えていることから、「初診時の580円の支払いすら厳しい家庭があるのではないか」と桜井さんは話します。
 こども診で働く助産師の神尾智予さんは、「慢性疾患で通院している場合、窓口負担は厳しい」と指摘し、重症のアトピー性皮膚炎と気管支喘息で3歳から通院している加藤翔くん(仮名・中学生)の事例を紹介しました。
 翔くんは両親と祖母の4人暮らし。父親は障害があり無職で、障害年金は月6万円程度。母親と祖母がパートをしてようやく暮らしています。5歳から喘息発作を繰り返し、時間外の受診も頻回にありましたが、子ども医療費助成対象の時期は窓口負担がなかったため、必要な治療を受けることができました。しかし、小学校に入学した途端に基本診察料と薬代だけでも月6700円の負担がかかり、さらに発作時の緊急受診もあると深刻な負担になり、治療の継続が危ぶまれる事態に直面しました。


無低制度で治療継続
 神尾さんは話します。「アトピー性皮膚炎や気管支喘息の症状は、生活環境に大きく影響されます。翔くんの症状をなんとか改善したいと、私たちは看護計画を作成し、家庭での療養についてご両親と何度も話し合いました。一番の心配は窓口負担でしたが、小学校入学時に就学援助世帯に認定され、無低制度の適用を受けたので窓口負担は免除され、現在まで定期通院することができました。もし無低制度がなかったら、翔くんは中断と悪化を繰り返していたでしょう」。
 看護主任の多屋佳葉さんは、「子どもを受診させに来た親が何日もお風呂に入っていない、衣服の汚れた方や、夜間診療の終了ぎりぎりに仕事着のままで子どもを受診に連れてくる方、冬になると交通手段がなく受診が中断するケースなどがあります。私たちが把握している他にも、困難を抱えている家庭がたくさんあるのではないでしょうか」と心配します。


すべての子どもの
医療費を無料に
 看護師長の下川部幸恵さんは話します。「低賃金、非正規職員など労働問題の影響で、貧困が広がっていると感じています。治療が必要な子どもが小学校に上がると3割負担になるため、受診をがまんさせている事例がたくさんあると思います。こども診の無低制度を利用して、そうした子どもたちの状況を打開してほしい。また、すべての子どもの医療費の無料化やワクチンの無料化なども必要です。私たちはこのとりくみを進めていきたい」。
 こども診では、より多くの親に無低制度を知ってもらい、安心して治療を受けてほしいと話し合っています。秋の「月間」での地域訪問などを通じて、無低制度を大きく広げることにしています。

(大須賀峰敏・県連事務局)

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