現場から

思いに耳を傾けて

2017年11月9日

訪問を通じて考える看護師の役割
勤医協西在宅総合センター

 「自宅で療養生活をしている患者さんとご家族に出会って、在宅医療がこれからさらに求められると思いました」と、昨年から勤医協西在宅総合センター長となった小林幸子さん。看護師歴42年、数々の病院や診療所で勤務してきましたが、看護師の訪問を声を弾ませて嬉しそうに出迎える利用者さんとご家族に出会い、驚きました。訪問看護師と在宅医療への大きな期待を感じながら、職員に求められていることを考えています。(渋谷真樹・県連事務局)

 

 「入院していた患者さんが自宅に戻るためには、ご家族やまわりの人の力を借りたり、環境を変えなければならないことが少なくありません。看護師はそのときの不安や戸惑いに耳を傾けることが必要ですが、実際は聞けていなかったかもしれません」と小林さんは振り返ります。


病室の夫に悩む妻
 腎癌で化学療法治療のため入院していた生田武さん(70代・仮名)。カーテンに囲われた病室に訪れる人も少なく、家族や職員が声をかけなければ言葉を発することもありません。寂しさの中で弱っていく夫の姿に、妻は悩みました。「本当は住み慣れた家で好きなことをさせて、私の手料理を食べてもらいたい」。しかし、家での看病に大きな不安と葛藤がありました。
 紹介されて受診した勤医協西区ひだまりクリニックの小林良裕医師が「心配しないで、思っていることを全部吐き出してください」と声をかけると、妻は堰を切ったように初めてその思いを打ち明け、訪問診療と訪問看護が入ることで自宅療養が実現しました。
 小林さんはこれまでの病棟看護の経験を振り返りながら話します。「病院で私たちは忙しく走り回っていました。患者さんたちは職員に遠慮して声をかけられないことがたくさんあると思います。一人ひとりの悩みや本音を聞くことは本当に難しいのですが、大変でも工夫して時間をつくることが大切です」。また、「入院中は看護師や病院の都合に患者さんがあわせていることがありますが、在宅では患者さんの都合に看護師があわせなければなりません」と違いを話し、「人生の先輩に『教えていただきたい』という気持ちでいることが大切」といいます。


かけがえのない時間
 生田さんの自宅で他の患者さんの目を気にすることなく訪問看護師と話ができる時間は、家族にとってもかけがえのないものでした。「夫はいつも訪問看護の日を楽しみにしていて、来るとキリッとした表情になりました。そんな夫をみるのが好きでした」と妻は話します。
 やがて生田さんの症状が悪化すると、妻は「本当に在宅でよかったのか」と、気持ちが何度も揺れ動きます。そのたびに看護師は妻を支え続け、最後を迎えることができました。「夫を大切にしてくれて嬉しかった」と感謝しています。
 「自宅で療養できるかと心配だったけれど、看護師さんを呼んだら30分で駆けつけてくれるから安心しました」「今は病院ですることだけが医療ではない時代なのですね」という患者さんやご家族の言葉に、在宅医療への期待の大きさと訪問看護の必要性を実感しました。


多くの職種が連携
 一人暮らしをしていた安藤郁子さん(67歳・仮名)は末期がんで寝たきりとなり入院。「家で療養したい」という願いに応えようと、看護師やケアマネジャーが連携を密にとり、サービス調整をおこないました。福祉用具の貸与をしている北海道保健企画は安藤さんのアパートに介護ベッドなどを搬入。ヘルパーと訪問看護が入って療養生活を支えました。
 こうした事例を通して小林さんは、訪問診療で支える医師、幅広い知識で一人ひとりの事情にあわせて制度を駆使しながらサービス調整をおこなうケアマネジャー、福祉用具貸与事業所などが連携して患者さんの生活を支えていることを強く実感しています。とくに、最も利用者との関わりが深いヘルパーは、一人ひとりの生活習慣や考え方に添うようにと料理の学習会を開くなどして技術を磨いていることにも驚きました。「ヘルパーさんは本当に献身的で、患者さんの生活を支えるためになくてはならない存在です」。


希望を叶える看護を
 小林さんは10月5日におこなわれた「道民医連看護師長研修会」で在宅患者の生活を紹介し、患者さんや家族に寄り添えていますかと問いかけ、病棟の看護師に「家で過ごしたいという患者さんの希望を叶えてほしい」と呼びかけました。参加者から、「退院後の患者さんの様子がよくわかりました」「尊厳ある死を迎えることで家族の力にもなると思う。患者さんの生き方を大切にして支えていきたい」と感想が寄せられています。

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