現場から
介護報酬あげて
次々と閉鎖するデイサービス あいつぐ改悪に悲鳴
十勝勤医協 デイサービスすずらん
次々と閉鎖するデイサービス あいつぐ改悪に悲鳴
十勝勤医協 デイサービスすずらん
「また町内のデイサービスが閉鎖する。しかも今月いっぱいで。ケアマネから空き状況を確認する電話が入った…」。十勝勤医協デイサービスすずらん介護福祉士の村上あゆみさんから、介護制度を憂う投稿が本紙に寄せられました。音更町と周辺地域でこの1年に3つのデイサービスが閉鎖したといいます。その影響を取材しました。(渋谷真樹・県連事務局)
突然の依頼
2月下旬、音更町の勤医協デイサービスすずらんに電話が入りました。帯広市のケアマネジャーから「デイサービスAが突然閉鎖することになったので、週3回利用している方の受け入れをお願いしたい」という依頼です。閉鎖までわずか1週間しかありません。すずらんの職員は手続きなどの対応を急ぎ、この方は無事にデイサービスを続けることができました。
地域にあるデイサービス事業所が次々に閉鎖していると村上さんはいいます。「民間で運営している中規模デイサービスA、帯広市内の病院が運営する中規模デイサービスBが相次いで閉鎖し、8月には社協が運営する大規模デイサービスCの閉鎖が決定しています。これまでにAとBから1人ずつ、Cから7人を受け入れました」。
デイサービスすずらんにはたまたま空きがありましたが、もし満杯だったらデイサービスの利用を中断することになっていたかもしれません。すずらんは要支援、要介護1と2の、比較的自立している方が多く利用していましたが、要介護5(重度)の方が利用することになり、車イスの送迎や食事、排泄などの介助が必要になりました。職員は事前に学習会をひらき、対応方法を確認しあいました。
心と体の負担
慣れ親しんでいた仲間たちと別れて新しい環境に馴染むことを難しく感じる高齢者も少なくありません。送迎の移動距離が長くなるなど、身体の負担も心配されます。2ヵ月前にすずらんに来た90代の女性(要支援2)は、「ずっと通っていたのに、突然なくなると聞いてびっくりしました」といいます。
広大な地域の事情
事業所が閉鎖するたびにケアマネジャーはその対応に追われます。在宅介護総合センター白樺のケアマネジャー・本田奈美絵さんは「地域にたくさんの事業所があればいいのですが、音更町には6ヵ所しかありません。利用者さんやご家族の意思や事情を考慮しながら短時間でデイサービスを探さなければならないので大変です」と話します。
また、広大な地域の事情も悩みのひとつです。送迎に時間がかかりすぎる場合は利用を断られることもあり、代替施設を探すことは難しいといいます。「送迎スタッフの時間外手当が発生すると、それだけ経営に影響します。どの事業所もギリギリの採算で運営しているので、受け入れたくても受け入れられない場合があります」と村上さん。
低い介護報酬
次々にデイサービスが閉鎖する理由について村上さんは、「低い介護報酬」を指摘します。
「デイサービスBにはたくさんの職員が働いていました。介護度の高い利用者さんが多く、それだけ人手が必要だったのでしょう。今の報酬では経営が成り立たないのだと思います」。
突然仕事を失うことになり、「私はこれからどうしたらいいの?」と、利用者に相談する職員もいるといいます。「デイで働く誰もが『明日は我が身』と感じています」と村上さんは不安げに話します。
国の介護保険制度によって2006年に始まった介護予防サービスは、基準や単価が全国一律でした。しかし、2015年に「介護予防・日常生活支援総合事業」が始まり、デイサービスとヘルパーは各市町村が基準や単価を設定して運営することになりました。音更町では以前の基準を保ち続けていますが、それでも段階的におこなわれてきた介護報酬ダウンによって経営できなくなり、閉鎖する事業所が後を絶ちません。
2014年に道内で1599ヵ所あったデイサービス事業所は昨年末に753ヵ所と、半分以下に減っています。村上さんは、「誰もが安心してサービスを利用するためには、介護報酬を大幅に上げることが絶対に必要です」と強調します。
国の施策はあべこべ
デイサービスが報酬削減のターゲットにされた2012年の介護報酬改定以降、運営は厳しさを増しています。
北海道民医連事務局社保広報部長の木幡秀男さんは、「国は介護給付費を減らすためにデイサービスの報酬を引き下げていますが、デイサービスの利用により介護度が維持でき、全身状態悪化の予防につながっているという側面を無視しています」と強調します。また、介護サービスの自己負担を一律2割負担以上にしようと計画している国に対して、「これではますますサービスが利用できなくなります。国は『自立支援介護』といいますが、現実の施策はまったくあべこべです。現場で起きている実態を集めて、自治体や国に対して改善を求めるとりくみは待ったなしの課題です」と訴えます。